美術を通して、これからの時代を生き抜く力を磨く!
美術工芸科
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色 いろいろ
1年生の「造形表現」という専門科目は、2年生からの専攻実習につながる8分野の実習を経験する科目です。4月入学後8分野をひと通り経験した後、3分野を選択して学び、そこからさらに選択した2分野を現在、並行して履修しています。生徒はそれぞれ8→3→2と絞り込んできた実習を火曜日・木曜日に分けて取り組んでいるので、後期の各分野の制作は、1週間に一度ずつ年度末まで続けることになります。
従って実習の様子を見に行くと一人の生徒が火曜日に制作しているものと木曜日に制作しているものが異なります。また1つの分野の実習を火曜日に見に行ったときと木曜日に見に行ったときは違った生徒が同じ課題に取り組んでいる場面に遭遇します。感性、観察力、創作力、実技力がふたりとして同じ生徒はいませんので、いつ見に行っても新鮮で、発見や驚きがあります。
先日、デザイン分野の実習室に行くと、色面構成とタイポグラフィという課題が黒板に示されていました。生徒の実習机の上には、様々な色の葉っぱや花びらが置いてあり、生徒は絵の具を混ぜ合わせながらその葉っぱや花びらの色を再現しようとしていました。自然物を写真で撮影するのではなく、自分の目で観察して、それをどの様な色だと捉え、絵の具でどう再現するか。色のトーンを学ぶための難しい課題でした。日本画専攻の実習室へ行くと、サツマイモと南瓜という自然物、野菜の着彩課題に取り組んでいました。課題はその日1回の授業で完成するものではありません。1分野の実習は1週間に1度なので、前の週からの継続で制作を重ねていきます。当然自然物の野菜は、色や形が変化します。時間の経過とともに変化するモチーフを観ながら、自然物の色をどう感じ、岩絵の具でどう表現するか、1枚の紙に描ききるか。なかなか深い問いが含まれています。染織専攻の実習室では、花のろうけつ染めを制作するための下絵の段階でした。花を観察し紙に描きます。しかし、色は、目の前の花の色と同じようにそのまま着彩するのではなく、美しい作品として完成するよう自分のイメージにあわせて細かく塗り分けをしていきます。生徒の前には、その生徒なりの観察力、感性、表現力で描かれた写生ではない花が描かれていきます。陶芸専攻では、装飾を施した箱形の小物入れを制作しており、土の表面に模様を描いていました。陶芸でも、染織でも、釉薬、染料の色と、完成したときの色は異なります。出したい色を出すために制作の過程の作業が大きく作用します。
8分野、8専攻の実習で生徒は様々な課題、制作を通じて、色を感じ、色と向き合い、色を創り、色を表現します。難しく、奥の深い学びです。美術の専門高校では色について考え、実践する場面がふんだんにあります。そして、常に形についても考え実践します。このようなアートの学びは、アートの中だけに収まらないような力を鍛え、磨いている。アートの専門家ではない私は、生徒の学びを見守りながら、そう思うのです。
2018年12月1日
校長 吉田 功