美術を通して、これからの時代を生き抜く力を磨く!
美術工芸科
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●始業式 校長の話
本日午前中、銅駝美術工芸高校の第40回入学式を行い、93名の新入生を迎えました。教職員も退職、新任、転任の教職員が17名変わりました。この新しいメンバーで第40回目の始業式ということになります。
4月は人の動きの大きい時です。自分の立ち位置が変わり、いた人がいなくなったり、いなかった人が現れたり。心の動きもいつもとは違う時期だと思います。新鮮でワクワクするような、しかし何となく落ち着かず、不安や戸惑いの生じるこの4月の初めに、少々心をゆるめる話をします。
皆さんは新聞や雑誌で「間違い探し」というのを見たことがありませんか。よく似た絵が二枚並んでいて、その中に何カ所か「違う」ところがあるのをを探す遊びです。計算して答えが一つという問題なら、結果が違うのは「間違い」ですが、並べられた絵を見比べて違うところを探すこの遊びは、「違う」ところは、間違っている、ミステイクなわけではないのに「間違い探し」という名称になっているのです。そんなことを思っていたら、この前、我が家の新聞に同じように2枚の絵を見比べる遊びが載っていましたが、「間違い探し」ではなく「同じもの探し」と書いてありました。
「違い」と「間違い」は別物です。英語で言えば、diffrence と mistake あるいはerrorでしょうか。人は、人と違うことを意識して落ちこんだり、自分がダメだと思ったり、逆に他の人の自分と違うところが気になって、避けたり、拒否したりということがあります。「違う」ことは「間違い」「誤り」「悪い」ことではないのに、自分を責めたり、人を傷つけたりすることほど悲しいことはありません。「違い」を見つけられたら、むしろ喜ぶべきではないか、人と違うことが認識できてこそ、自分も他の人もかけがえのない唯一の存在だと思えるのです。新しいクラスになり、新しい人と出会ったときに、違うこと恐れたり、避けたり、あるいは「同調」することにエネルギーを使ったりすることをせず、違うことをそのままに関わり合ってください。そして我が家の新聞の「同じもの探し」のように、ささやかなことでも「同じ」であることを見つけて、「共感」を重ねてください。「同調」は他のモノに調子を合わすこと。「共感」は違いを認め合った上で相手のことに思いをはせることです。
私が最後に担任をした学年も、一部のクラスを除いて毎年、クラス替えをやっていました。やはり、4月という年度の変わり目は、何かしら気持ちの上で負荷がかかるのですが、私のクラスでは、生徒の発案で全員の誕生日を聞いて、月ごとにイラスト入りで名前と誕生日を書き、その日が来るとSHRで、全員でその生徒に拍手を送るということをし始めました。もちろん私も入れてもらいました。みんな特性、個性があるなか、特別に深くつきあうわけではなくても、誕生月の同じ生徒を1枚の紙に名前を書いて張り出すと、ささやかな「同じもの」が見つかり緩やかなつながりができるのです。違いばかり意識していると忘れがちですが、みんな必ず誕生日があり、だから今ここに生きているという点では同じ。あの人は違う、あの人は受け入れられないという構え方は、モノを生み出しません。何としてでもこの銅駝に入学したいと思って入試を受け入学できたということは、みんな同じ。正面から向かいあって合う合わない、好き、嫌いと評価ばかりせず、横に並んだり、ナナメから見たりしてみてください。そのひととの共通点や魅力が見つかり、気持ちが楽になります。
新しい年度が始まります。皆さんが、「違い探し」で違いを認め合うことと、「同じもの探し」でつながりを感じ、緩やかな関係性をつくることを願っています。
平成31年4月8日 前期始業式
校長 吉田 功