3年間で卒業できる定時制高校
普通科
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夢の途中 -閉制にあたって-
昭和10年京都市立専修商業学校発足から87年の歴史と伝統を持つ京都市立西京高等学校定時制課程が、令和5年3月をもって閉じることになりました。この間西京高校定時制は、昭和、平成、令和の時代の中で、様変わりを繰り返しながらこれまでに約5,600人の卒業生を輩出してきました。閉制を迎えるにあたり校長として極めて感慨深い思いがあります。ここまで定時制教育を支えていただいた卒業生の皆さん、保護者の方々、また本校教育活動に携わっていただいた教職員、関係者の方々に深く感謝申し上げます。
西京高校定時制の教育目標は「普遍・誇り・努力(普遍的真理の探究を通して、豊かな人間性を涵養し、もって社会に貢献する人材を育てる)」です。学校とは、生徒の皆さんが人生を幸せに暮らすために何が必要なのかを考える場所の一つだと思います。もちろん自分の夢を描き、その実現のために努力をすることが求められていることはとても大切なことです。そのために普遍的な真理を探究し、豊かな人間性を育むことが必要となります。
さらに言えば、自己実現のために努力した結果、そのことが世のため人のためになることが、真の幸せといえるのではないでしょうか。「頑張ったから幸せになれる。」と思うよりも「頑張ることが幸せなんだ」と考える方が人生の幸せを感じることになると思います。そして学校は、生徒が頑張れる環境を生み出すために、心が通い合い温かいところでなければなりません。西京高校定時制はそんな学校であったと思っていただければ幸いです。
本校の教育方針の中に「自律の精神を養う」「人権尊重の精神を養う」とあります。多様化した時代の中で、個性を磨きここを大切にすることはとても重要なことです。同時に、他者を尊重することが求められています。「自由の相互承認」という考えがありますが、自分の自由が許される範囲は、相手の自由を損なわないという前提があるということです。自律するために多くの人たちの助けが必要であったはずです。その時に、相手の立場や考えを尊重する姿勢を学ばれたのではないでしょうか。ぜひ育んでこられたこれらの精神を、いつまでも大切にしていただきたいと存じます。
西京高校定時制は閉制いたしますが、本校が大切にしてきたことが卒業生の皆さんの心の中に刻まれ、人生を幸せに暮らすための支えになればと思います。100年人生といわれる昨今ですが、私たちの人生はまだまだ「夢の途中」です。皆様にとって西京で学ばれたことが、人生を幸せにするためのかけがえのない財産であることを願っております。
京都市立西京高等学校長 岩佐 峰之
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閉制にあたって
定時制課程を閉じるという意味の「閉制」。この一般的には耳馴染みのない、また広辞苑にも載っていない言葉のもと、西京高等学校定時制は令和5年3月をもって90年近い歴史に終止符を打つこととなりました。
昭和23年の新制高校発足時、京都府下では本校を含め57校もの定時制高校と2校の通信制高校が設置され、「勤労青少年に後期中等教育を保障する」という理念のもと、教育活動を続けてまいりました。
戦後まもなくは、戦争で父親を亡くした家庭や、経済混乱により困窮した家庭・生徒のために高校教育の機会を保障してきました。現在のような冷暖房設備など望むべくもなく、また照明も暗く停電を繰り返し、また給食もない厳しい教育環境の中でも生徒たちは熱心に学習したと聞き及んでいます。
高度経済成長期には「金の卵」と呼ばれ重宝された中学校卒業生達の内、都市部に集団就職してきた生徒のために、教育を保障する役割を担いました。私も新卒で定時制高校に赴任した昭和60年代前半には中学校卒業後に北海道から京都に就職し、定時制高校に通っていた生徒がいたのを覚えています。
一方で高度成長の結果、昭和40年代前半からは高校進学率が上がりました。そのため全日制高校へ行けなかったいわゆる「不本意入学」の生徒が増加し、生徒指導や学習指導に困難をきたす時期もありました。
近年は、不登校をはじめとする様々な困りを抱えた生徒たちに教育を保障する場へと変遷していき、多様な学びを保障するとともに、子ども達に寄り添い支援する教育を推し進め現在に至っています。
私が本校に赴任した平成11年度以降も、本校は様々な変容を成し遂げてきました。ハード面では新校舎建設に伴い平成13年度から平成14年度の二年間はプレハブ校舎で教育活動を行い、平成15年度から新校舎に移りました。ソフト面では、平成15年度より選択制による「三修制」を導入しました。当時、全国的に3年で卒業できる定時制高校は決して珍しいものではありませんでしたが、多くの学校では通信制課程の単位や大検等を自校の単位として読み替えていました。本校では外部単位に頼らず、すべての単位認定を本声の授業のみで行うこととしました。これは本校の生徒の教育は本校の教員で責任を持つという考え方からでした。
平成16年度からは三修制広報のため中学校訪問が始まり、中高連携が深まりました。交通の便がよく、校舎も新しく、3年で卒業できる定時制高校としての認知が高まってきました。
平成25年度選抜より長期欠席者特別入学者選抜が始まりました。選抜の定員は5名程度から10名程度と決して多くはなかったのですが、本校は毎年定員以上の合格者を出すことから、「西京定時制は不登校経験の生徒を受け入れてくれる学校」と認識されだしました。また、この年の入学生から全生徒が3年で卒業することを原則としました。先の制度と合わせて、486名の生徒が3年で本校を卒業していきました。
平成28年度からは、文部科学省委託事業として「多様な学習を支援する高等学校の推進事業」に取り組んでまいりました。この取組は途中で内容が変わったこともあり、令和2年度まで5年にわたりつづいていき、生徒に寄り添い支援する本校の教育に寄与してきました。
令和3年度に本校の教育実践を受け継ぐべく京都奏和高校が開校しましたが、中学校の多くの先生から、「京都奏和高校のような学校ができることは望ましいが、西京高校定時制も残して欲しかった」というお声を多くいただくのは、本校が実践してきた教育への評価である考えています。
私ごとになりますが、昭和60年に京都市に採用されて以来38年間の教員生活すべてを定時制教育に捧げてきました。西京高校定時制が閉制を迎える今年度末をもって、私自身も定年退職を迎えることに何らかの運命を感じずにいられません。
京都奏和高校は本校の教育実践を受け継ぐことになります。いえ、京都奏和高校が受け継ぐのは西京高校定時制の教育実践のみでなく、新制高校発足時に京都市立として設置された5つの定時制高校、すなわちすでに閉制となった堀川高校専修夜間部、堀川高校定時制、洛陽工業高校定時制、西京高校定時制、そして次年度末に閉校を迎える伏見工業高校、すべての教育実践を受け継いでもらえるものと期待しています。社会に果たすその役割と責任は重大なものとなるでしょう。京都奏和高校の関係の皆様に、大いなるエールを送らせていただきます。
さて、閉制にあたり、本校校門前に記念碑を設置いたしました。記念碑は令和3年度から構想にかかり、当時2学年に在籍した生徒とともに作成してまいりました。形状に関しては他校定時制の記念碑の写真を提示しどのようなものがよいかアンケートを実施しました。イラストを描いてくれた生徒もいました。
碑文に関してはまず生徒から定時制高校をイメージできる言葉を自由に出してもらいました。
灯(ともしび)、月の光、夜空、星空など夜間定時制をイメージさせる言葉や、学び舎、青春、笑顔など高校生活をイメージさせる言葉が多く出てきました。それらをつなぐ形で教職員や生徒たちがいくつかの碑文案を作成し、最終的に6つの案に絞り生徒に提示し最終アンケートで決定しました。決定された碑文は「夜空に集い 星と学ぶ」となりました。生徒や教職員が主語となるいい碑文だと思います。
記念碑の碑文の揮毫につきましては、本校で書道担当としてご勤務いただいた、万殿伸明先生にお願いしました。また、3月18日に行いました閉制式の式次第と、閉制に際して作成した記念誌の表紙には、旧校舎と新校舎の挿絵があります。こちらは本校で美術・工芸担当としてご勤務いただいた、古谷一規先生にお願いしました。ご紹介させていただくとともに、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
最後に長きにわたり本校教育にご支援・ご協力賜った卒業生及び保護者の皆様、教職員または教育委員会の皆様、そしてすべての関係者の皆様に厚く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
最後の卒業生へ
コロナ禍の厳しい3年間でした。いえ、コロナ禍以上に後輩の来ない寂しい2年間でした。
みんなの入学前からこの閉制が決まっていましたが、それでも西京定時制を選び入学してくれ、最後まで明るく高校生活を過ごしてくれました。みんながいてくれたからこそ、こうして無事閉制を迎えることができたと思っています。ほんとうにありがとう。
4月からの新たなステージで大きく羽ばたいてください。
皆様、どうか彼らをたたえてやってください。
以上を持ちまして閉制に当たっての挨拶とさせていただきます。
京都市立西京高等学校定時制
副校長 中塚 洋
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