社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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9月17日(土)11時50分から,7階メモリアルホールにおいて,1年生全員(約280名)を対象としたEEP特別講義を,今回は京都大学の「高大連携事業・学びコーディネーター大学院生による出前授業」として実施いたしました。
講師は,京都大学大学院農学研究科博士後期課程の龍野瑞甫先生で,「ミツバチが見る世界」と題して,約1時間御講演を行って下さいました。
龍野先生は,「地声でやります」と,マイクを使わずに講演を始められました。滑舌とリズムの良いマシンガントークです。よく通る声で,後ろの席の生徒にもしっかりと聞こえていました。
先生は「ハチの目の構造」からお話を始められ,「複眼を通してみる世界はどのようなものだと思いますか」と,生徒に挙手を求められました。ハチの複眼は約5000個の個眼が集まって出来ており,一つ一つの個眼が1ピクセルに相当し,視力は約0.01くらいだそうです。(ちなみに,アゲハチョウでは約0.02,トンボでも約0.03とのことです。)
次に,「ミツバチの色覚」についてお話し下さいました。まず「色って何だろう」ということで,モルフォチョウの羽の色や,ナトリウムランプのもとでの物体の色の見え方を例に挙げ,「色は物質に固有のものではない」「物質の表面構造や周囲の光環境で変わる」ことを説明して下さいました。そして,カール・フォン・フリッシュ(Karl von Frisch/オーストリアの動物行動学者。ミツバチの8の字ダンスを発見・解読した。)が行ったミツバチの色覚実験を紹介して下さり,実験を行うに当たって注意すべき点についても解説して下さいました。(青色と灰色の2つの餌台で行った最初の実験ではミツバチが色を見分けられているとは言い切れず,色の三要素[色相・彩度・明度]を考慮しなければならないことなど)そして,この他にも行われた様々な実験(電気生理学的手法や行動観察等)の結果から,ミツバチの色覚特性として,(1)光受容体がヒトと同じく3種類から成るが,ヒトが「青・緑・赤」であるのに対して,ミツバチは「UV・青・緑」であること,(2)ミツバチは390nm(ナノメーター)と490nmのあたりで色の弁別能力が高い ということが分かったそうです。
そして,ミツバチの眼から見た花の様子がわかる合成写真も示して下さり,「ピンク色,青色,黄色の花は,ミツバチから見てもよく目立つ」「(全ての植物でこの通りではないが,)赤色の花は,ミツバチの眼から見たらあまり目立たない」ということを実感させて下さいました。(ミツバチはあまり赤い花には訪れない,とも言われているそうです。)
3つ目に,ミツバチには人間と同じような「形の抽象化能力」「色の恒常性」があることについても,例を挙げながら詳しく説明して下さました。
このうち,「色の恒常性」については,以前話題になった「このワンピースの色は“青と黒”に見えるか“白と金”に見えるか」等の例を挙げながら,分かりやすく説明して下さいました。・・・私たちの視覚は,光そのものを見るためでなく,光によって照明された物を見るようにできており,周囲の状況が変わっても同じものは同じ色で見えるように脳内で補正を掛けています。しかし,環境光がよく分からない写真やイラストの場合,対象物と背景との色の対比補正(←「光の当たり方」の解釈をもとに脳内で行っています)度合いが人によって異なるため,このようなことが起こるわけです。
4つ目に,ミツバチの「偏光視」(ミツバチは偏光を捉えることができるので,それを利用して,曇りの日でも太陽の位置を把握できる)や「野外での生態」(ミツバチが花を探す時は“色”や“形”を手掛かりとしており,同じ種の花を繰り返し訪れる強い傾向[定花性]がある。また,色の恒常性の能力があることで,花のおかれている光環境に関わらず,対象とする花を見つけることができる。コロニー内で花のありかを共有する際,太陽の位置を基準として花の場所が符号化される)についても紹介して下さり,「8の字ダンス」についても詳しく説明して下さいました。
最後に,本日の御講演のポイントのまとめを行って下さり,生徒代表からのお礼の言葉で,特別授業が終了しました。
生徒の感想です。
・私が興味を持っている生物の行動学の話だったので,とても興味深い内容でした。実験を繰り返して結論を導くのは大変そうだけれど,その実験で生物の新たな生態を知るのはとても楽しそうだと感じました。
・聞いている生徒の反応を見ながら,難しい内容を出来るだけ噛み砕いて伝えて下さったので,分かりやすかったです。ミツバチは嫌いで怖いものだと思っていましたが,視点を変えてミツバチから見た世界を考えたのが面白く,色の見え方も違ってびっくりしました。
・内容は少々難しかったけれど,ハチが思っていた以上に高い能力を持っていたことに興味をもったし,色覚や抽象化の話など,自分の全く知らない世界を知ることができて,とても面白かった。
・文理選択を控えている私たちにとって,非常に良い経験となりました。ハチについて少し興味が湧いたので,調べていきたいです。
・先生がすごく楽しそうに講義されているのが良いなと思いました。私も大学で自分の勉強にあれほど熱心になれるようになりたいと思いました。
文理選択を決定する大切な時期を迎えているということもあり,生徒たちは皆熱心に耳を傾けている様子でした。
龍野先生,お忙しい中御講演下さり,有り難うございました!