社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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第32回京都賞ウイーク・青少年育成プログラムの一環である「高校フォーラム」(稲盛財団・京都大学の共催)が,京都大学百周年時計台記念館「百周年記念ホール」を会場として,11月14日(月)14時30分から16時まで行われました。京都府内の7校(府立2・京都市立3・私立2)から約400人が参加し,本校からもスタッフを含む1~3年生の希望者31名が参加しました。
科学や文明の発展,また人類の精神的深化・高揚の面で著しい貢献をした方々に贈られる国際賞「京都賞」基礎科学部門(生命科学)の本年度の受賞者でいらっしゃいます,本庶佑博士(京都大学名誉教授)による今回の高校フォーラムでは,本庶先生の特別講義「免疫力でがんを治す」(約15分)に加えて,近藤滋博士(大阪大学教授)企画・司会による,会場の高校生との質疑応答セッション「京都賞受賞者を裸にする」(約30分)の時間も設けられました。
博士の受賞理由は,「抗体の機能性獲得機構の解明ならびに免疫細胞制御分子の発見と医療への展開」(説明文:クラススイッチ組換え機構とそこに働くAIDを同定して抗体の機能獲得メカニズムを解明し,PD-1/PD-L1分子の同定と機能解析によって新しいがん免疫療法に道を拓いた。その成果は広く医学・生命科学に影響を及ぼすとともに,医療へと展開されて人類の福祉に多大な貢献を果たしている。)というものです。
冒頭の御講演は,わずか15分という短い時間の中で,簡潔なスライド資料をもとに,分かり易く御研究内容をお話し下さいました。エドワード・ジェンナーによるワクチンの発見から始められ,
・抗体の多様化の仕組みに関する研究のまとめ
獲得免疫の謎の一端を解明
抗体記憶(クラススイッチと抗体結合増加)を生む酵素AIDを発見
し,その分子機構を解明
・PD-1( Programmed cell death 1)の構造
・免疫制御は自動車走行制御と似ている
・免疫のアクセルを踏むがん治療の試みは成功しなかった
→PD-1ブレーキを外してみる
マウスでの腫瘍増殖抑制
完全ヒト型抗PD-1抗体作製・投与(6箇月で投与を停止した
が,31名中20名でその後1年半以上再発なし)
・がん治療薬「オプジーボ」
PD-1阻害によるがん免疫治療は画期的
すべての種類のがんに効く可能性が高い
投与をやめても長期間有効なので,再発が少ない
副作用はあっても軽い
・PD-1抗体治療によって,がん治療は大きな角を曲がった。
「我々は,今,がんにおけるペニシリンの発見ともいうべき時期に
いる」(Don Chen 氏の言葉)
・がん治療の将来予測
PD-1阻害を中心とした免疫治療の有効性が高まる。
すべてのがんは免疫力で基本的に治療できる。
がんは一種の慢性疾患となり,コントロールできる。
免疫の攻撃からまんまと逃げようとするがん細胞に対して,免疫にブレーキをかけている要因を抑えることで免疫細胞が十分に活躍できるようにし,自分の免疫の力でがんを治すという新しい道を切り拓かれた本庶先生の御研究の一端や,今後の見通しもよく分かりました。