社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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12月21日(木)~26日(火)の土日を除く4日間,1,2年生は冬季学習講座に取り組んでいます。その中に「エンタープライズ(EP)」(総合的な学習の時間の校内呼称)の時間も設定されています。1年生は,25日(月)が今年最後のEP1で,3月に行われる「海外フィールドワーク(FW)」の事前学習を進めています。特に,現地での調査活動をどのように進めるかがを中心に話し合ったり,冬季休業中に各自が行う作業を確認しています。
事前学習の取組を紹介します。
12月7日(木)6限のEP1は,7限のロングホームルームの時間とドッキングして,2時間で実施しました。3月に迫ってきました海外FWを行うにあたりさまざまな取組を進めてきました。7月以降,全7コース[シンガポール,マレーシア,タイ,ベトナム・カンボジア,インドネシア,上海,グアム]の研究から所属コースの決定,夏課題・秋課題の作成,グループごとの調査テーマ決定,行程の検討等,継続して取り組んできたFW事前学習もいよいよ大詰めです。
今回は,いつもお世話に与っております浅利美鈴先生(京都大学地球環境学堂准教授)をはじめとする京都大学の皆様のご協力により7名の留学生の方々がご来校下さり,マレーシア,タイ,ベトナム・カンボジア,インドネシア,上海の5コースの事前学習にご参加いただきました。
各コースとも,留学生の皆さんの自己紹介から“交流授業”が始まりました。それぞれのコースの生徒から出されたさまざまな質問に答えて下さりました。グループごとに分かれてからは,現地での班別行動時のアドバイスをいただいたりと,大変意義深いひと時となりました。
この中で,インドネシアコースの様子を紹介します。
このコースには,3名の留学生の皆さんがお越しくださいました。
Agung Brewokさん(京都大学アジア・アフリカ研究所)とNur Fildzah Amaliaさん(京都大学大学院地球環境学)はジョグジャカルタ※のご出身,Yulius Hermantoさん(京都大学iPS細胞研究所[ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥所長のもとで,iPS細胞の研究をしておられます])はスマトラのご出身だそうです。
※ジョグジャカルタはインドネシアの古都です。京都府との友好提携州省(昭和60年[1985年]締結)の一つで,「世界歴史都市連盟」加盟都市です。
それぞれの出身や日本に来た経緯,現在の研究内容などを含む自己紹介が終わると,次は本校の生徒の番です。司会はインドネシアコース交流部,1年7組山田耀真くん。一人ずつ1分程度で,自分の名前,好きな教科,趣味,海外FWでインドネシアを選んだ理由を英語で発表しました。次に,Amaliaさんからパワーポイントを使ったインドネシアについてのプレゼンがありました。インドネシアの概要,ジャカルタのモナス,さらにはご自身の研究(日本の竹の研究)を先ほどよりも掘り下げてお話しいただきました。お互いの自己紹介が終わり,次は生徒からの質問タイムです。とはいうものの,生徒たちは少し躊躇している様子。数名の生徒が積極的に手を上げて,「なぜ日本に来たのですか?」「日本に来て一番驚いたことは何ですか?」,そして「日本人に対するイメージはどんなものですか?」など,思い思いの質問を投げかけて口火を切っていました。
約10分の休憩を挟み,授業後半ではディスカッションができるように,向かえ合わせの机の配置にし,それぞれが事前にまとめてきた班別調査の問題点,研究の進め方について話し合い,有意義なディスカッションができたようでした。
以下に生徒の感想を一部抜粋します。
[1年4組 澤木政寛くん]
インドネシアの環境の現状が深刻と言われているとはいえ,僕はそれを日本人のサイドでしか読んだことがない。つまり,インドネシアにいる人が実際に感じていることとズレがあるかもしれないと思った。
[1年4組 中村健人くん]
自分たちが考えていることはものすごく主観的であり,現地の状況を的確に捉えられていないと思った。
[1年7組 川上輝くん]
正直,話が聞き取れなかった部分も多く,もっと英語(スピーキングとリスニング)の能力をつけないといけないと思った。
[1年7組 サラさん(デンマークからの留学生)]
とてもいい機会だった。インドネシアの文化や宗教について聞けたのはよかった。
生徒たちの感想を見る限り,以下の2点に集約できそうです。1つに,他者理解における現状把握の主観性と限界性,そして英語によるコミュニケーションです。現在は,本やインターネットから行き先国の情報を得ていますが,専門書や研究書ではない一般的な通説と現地の実際には差があることが多いのも事実です。また日本で育った思考枠組みのまま他者を眺めると,一方向的な理解となります。また,英語でのコミュニケーション難に関する記述が目立ちました。これからアジアにおける国境を超えたコミュニケーションが必要になって来ますが,彼らの英語が「スタンダード」です。英語の授業ではもちろん,正しい発音・アクセント,正しい文法表現が求められますが,世界における英語の「実際」は異なるということを身を以て体験できたのではないでしょうか。
課題はまだまだたくさんありますが,まずはFWにおける実体験を通し,「探究のプロセス」繰り返し,その中で芽生えた問題意識を発酵させて,2年時のEP2で取り組む「課題研究」のグループ論文につながるような力を得ることができればいいと思います。
今回の留学生の皆さんとの交流という,一つの「実体験」を通して,生徒たちの「なぜ?」が増殖し,彼らの「問い」がより深化されることでしょう。忙しい中足を運んで下さいました留学生の皆様,ありがとうございました!
写真
1枚目上 インドネシア,タイ
中 ベトナム,上海
下 マレーシア
2枚目 授業終了後の記念撮影