社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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3月1日(金)午前10時から,本館7階の京一商西京メモリアルホールにて,平成30年度卒業証書授与式を挙行しました。本日卒業式に臨んだのは,自然科学系コース156名,社会科学系コース119名,総計275名(男子129名,女子146名)のエンタープライジング科第14期生です。
伝説の入学式から3年。この3年間で成長した14期生の姿は,とてもまぶしくこれからの活躍に期待したいと思います。卒業おめでとうございます。
卒業証書授与に続く校長式辞を紹介いたします。(一部省略しています。)
ただいま,エンタープライジング科第14期生275名の皆さんに卒業証書を授与いたしました。まずは,卒業生の皆さん,ご卒業おめでとうございます。
さて,皆さんにとって西京高校での3年間はいかがだったでしょうか。今ここで入学時の自分の想い,その後の学習や学校行事,部活動など,高校生活3年間を振り返ってほしいと思います。
私は皆さんの入学と共に3年ぶりに校長として西京高校へ戻ってきました。皆さんとの出会いである入学式では皆さんの入学を許可するのに大変,手間取り申し訳ございませんでした。肩をゆすりながら懸命に笑いをこらえられていた皆さんに今でも感謝しております。そんな14期生の皆さんとの3年間を含む西京高校通算13年目の教師生活を皆さんと過ごし,今ここに卒業式を迎えることができていることを大変嬉しく思います。
西京祭のテーマでは皆さんが1年生の時「竹田丸」,2年生の時,「ブルゾン竹田 WITH S」としていただき,WITH SAIKYO,つまり 西京の皆さんの輪に入れていただいて一緒に西京祭を楽しむことができました。3年生の今年度も仲間入りを期待しましたが「西京高校 楽しみ方改革」。少し残念な気持ちもありましたが,前年度踏襲ではなく,常に自分たちの新しいものを作り出しながら西京祭をリードしてくれていた14期生の皆さんに,改めて感謝の意を表したいと思います。
西京高校は,「進取,進んで物事に取り組もうとする気性」,「敢為,敢えて困難に立ち向かおうとする気概」「独創,そのような気性,気概をもって自分独自の価値観を作り出していく」,この「進取・敢為・独創」の校是のもと将来,「社会人力」を十分に発揮し,社会に貢献・活躍できるグローバルリーダーを育成することをめざして,教育を行っています。
「社会人力」とは,人が人として行動できる力。つまり「人と繋がる力」「社会と関わる力」そして「果敢に知と向き合う力」です。私たち教職員は3年間を通して,皆さんに,これらの力をつけてきたと自負しています。
西京高校のカリキュラムのうち最も特徴的なのはEP1・EP2の取組です。1年次に行うEP1から2年次のEP2の5月までは,まずアイディア企画演習と称してポスター発表等を通じてグループワークの作法を学ぶとともに日常当たり前だと思っていることに対して疑問を持ち,問題化する力を付けました。
1年3月に実施した海外FWにおいては皆さん,一人ひとりが「どこで何を学びたいのか」を十分考えながら,渡航先をそれぞれの判断において選びました。用意されたものに取り組むのではなく,自分の判断を尊重し,その判断を自分の責任のもとに説明する過程を大切にして実施しました。また生徒で構成する海外FW委員会を組織し,生徒自身の手による運営で「主体的思考力・行動力」を身に付け,多くの皆さんがそれぞれの役割を担いながらリーダーとしての自覚・経験を積んでくれたと思います。
2年6月から始まるEP2におけるゼミ活動においては,それまでの活動で学んだグループでの探究の進め方や課題の立て方,調査方法を総動員して,自らが深めたい問いについて探究し論文にまとめ発表しました。ゼミ活動は自分自身で問題点を見つけ,改善のための仮説を立て,検証し,論文にまとめ発表するという大学での研究活動につながるハイレベルなものであったと思います。
ここにいる皆さんは,小学校以来12年間にわたる学校教育を本日終えます。保護者や学校から与えられる教育は,終了します。いよいよ自分のための勉強が始まると思ってください。これからは主体的な学びへの挑戦が始まります。
主体性は,他者の言葉に耳を傾けつつ,他者に流されない態度をとる。一見矛盾する二つの行為を同時に行う,大人へ向かおうとする態度です。また,主体性は勇気と連動します。西京で培った「進取・敢為・独創」のエンプラ魂を胸に,他人に何と言われようが,わが道を進む「主体性」と「勇気」を是非とも持って自分のめざすすべき道を進んでいって欲しいと思います。
(中略)
NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組製作委員会委員である京都大学 総合博物館 准教授 塩瀬先生は,ある講演の中で「自分と考え方も言葉も文化も異なる人たちと日常的に接することは口で言うほど簡単ではありません。違和感も生じることがあるでしょう。しかし,そこから始まって差異が楽しめるかどうかで,その後の人生は大きく左右されると思います。大事なのは自分を常に見つめ直すこと。異質の中に身を置いてみることほど有効な方法はありません。その違和感によって振り動かせて変る自分が,本当の自分かもしれないし,それでも変わらない自分が自分なのかもしれない。」とおっしゃっています。
皆さんには多様化し,グローバル化している社会において他者の視点を知ると同時に自らの視点を知ることのできる「対話」を通じて自分を成長させて欲しいと思います。
「独創とは勇気である。」
この言葉は今年1月,享年93歳で死去された哲学者 梅原猛氏の言葉です。氏は京都大学哲学科卒業後,国際日本文化研究センターの初代所長,京都市立芸術大学長などを歴任し多くの著作を発表し,「この国とは何か」など根源的な問いを旨として古事記や法隆寺などをテーマに独創的な学説を打ち出してきました。その論考はこれまでの文明史観,歴史観を根底から覆す大胆なもので「梅原日本学」と呼ばれましたが,そのような学説は時に議論を巻き起こし,激しい批判にさらされてきました。それでも氏の独自のまなざしは,とどまりませんでした。「勇気」なしには貫けない「独創」ということを身をもって示した人物と言えるでしょう。
氏は文化勲章受賞時の記者会見において
「頭のいい悪いじゃないです。理性で間違いないと思ったらまっすぐ進めと若い人にすすめたい。」
と述べておられました。
これから大学で研究し,社会で活躍・貢献していく皆さんにとって,日頃,当り前だと思っていることを批判的に捉え問題化することが大切であるし,自分が興味を持ち,どうしても解決したいと思うテーマを是非もって欲しい,いえ,設定してほしいと思います。一体これは,なぜなのだろうかという驚きと,それに対する執着心,尽きぬ興味を持つということが第一の要件であると思います。また,こんなことが実現できれば素晴らしいといった「ドラえもん」のような憧れを持ち続けることが大切なのではないでしょうか。皆さんには純粋な子供のような探究心をもち続け,既存の価値観に縛られることなく自身の信念をもって,梅原猛先生のように失敗や批判を恐れず,敢えて困難なことにチャレンジする気概,勇気をもって持続可能な社会の実現のために活躍・貢献してほしいと思います。
梅原猛氏の
「独創とは勇気である。」
この言葉を,皆さんに贈りたいと思います。
最後になりましたが,保護者の皆様に一言お祝いを申し上げます。本日は,お子様のご卒業誠におめでとうございます。この間,様々な出来事があり,何かとご心配をおかけしたこともあろうかと存じますが,それに関わらず,本校の教育に最後までご理解とご支援を賜わり本当にありがとうございました。本日,お子様方は,大きな夢を抱いて本校を巣立っていかれますが,後に続く在校生とともに,卒業生の想いを引き継いで,西京高校がより良い学校になりますよう,私たちも努力を重ねていきたいと存じます。今後とも,本校教育に御支援を賜わりますようお願い申し上げます。
本日は誠におめでとうございます。
平成31年3月1日 京都市立西京高等学校 校長 竹田 昌弘