社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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10月17日(土)11時50分から,7階大講義室において,1年生全員を対象としたEEP特別講義を,今回は京都大学の「高大連携事業・学びコーディネーター大学院生による出前授業」として実施いたしました。
講師は,京都大学大学院農学研究科博士後期課程の米田有希先生で,「歩けない植物は武装する」と題して,約50分間御講義を行って下さいました。
冒頭に,「今日の授業は,“サイエンスに興味を持ってほしい”“いろいろな人生があるんだなあ”の2つがポイントです。」として,まずは先生の自己紹介と,学位の流れについてお話し下さいました。
先生が理系を選択されたのは,お母様が花屋を営んでおられ,植物に興味があったからだそうです。学部の卒業研究は「遺伝子組み換え作物の作出」で,大学院の修士(博士前期)課程で研究の中で自ら仮説を立てて検証していく楽しさに気づかれ,研究を通して社会貢献することを目指されたそうです。園芸学と英語力の双方を鍛えるためにアリゾナ大学にgraduate studentとして1年在籍されたのち,現在は博士後期課程で研究を続けておられます。
1つ目の話題は,植物がどのような方法で環境に適応しようとするのかについてです。
植物は動物と異なり自由に体を移動させることが出来ないため,生活環境の影響を大きく受けます。しかし,植物にとって生活する環境が自分に最も適したものであるとは限らず,さまざまなストレス(乾燥・強い光・虫・塩害等)を受けることになります。そこで,植物は外見や中身の成分を変化させたりして生き抜く手段を取るそうです。
その例として,乾燥地帯で育つ野生種スイカ(乾燥に耐えるため,アミノ酸の一種であるシトルリンを多く含む)・シロイヌナズナ(ペンペン草の仲間のこと。害虫が自身を食べる際の音[葉をかじる振動]を感知し,アリルイソチオシアネート[カラシ油]を分泌して防御)等を挙げられ,人間への応用(例えば,シトルリンは保湿のための化粧品に)についても説明して下さいました。
2つ目の話題は,理系大学院生の1日の生活風景です。研究室の3人の院生を例に,「実験→実験結果の処理→次の実験準備・論文調査」というサイクルを繰り返している様子を,実験方法や,実験準備の具体的な内容も織り交ぜながら紹介して下さいました。学会発表やマラソン大会,フィールド調査の一コマ,また時には研究室に泊まり込む様子等もお話し下さいましたので,忙しい中でも充実している研究生活の一端が理解出来たのではないかと思います。
3つ目として,米田先生の研究内容の一端を紹介して下さいました。
研究の際に作っておられる,全体像と細部の関係が一目でわかるノートの一部を示しながら説明して下さり,「植物は自身の形態を変化(葉の厚みの増加や棒状組織の発達等)させて光合成活性を最適化する」「シロイロナズナにおいて,下位葉のみが強い光を感知して強光シグナルを上位葉へと伝える」などのトピックについて平易に解説して下さいました。
最後に,まとめとして,御自身の中学・高校の頃の様子を絡めながら,進路選択に関する大切な話をして下さいました。
研究はとても楽しいものだが,物事を楽しく感じるためには,土台(基礎知識)が必要である。その基礎知識を丁寧に教えてくれているのが高校の授業。人は絶対に強みや才能を持っているものであるから,見聞を広めて興味のある分野を見つけ,常勝志向(ポジティブ・シンキング)で将来に繋げて欲しい,と13期生たちに熱いメッセージを送って下さいました。
文理選択を決定する大切な時期を迎えているということもあり,生徒たちは皆熱心に講演内容に耳を傾け,自分の進路について真剣に考えている様子でした。
米田先生,お忙しい中御講演下さり,有り難うございました!