社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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第31回京都賞ウイーク・青少年育成プログラムの一環「高校フォーラム」(稲盛財団・京都大学の共催)が,京都大学百周年時計台記念館を会場として,11月13日(金)午後に行われました。京都市内を中心とする府内の9校から約450人が参加し,本校からも1~3年生の希望者82名が参加しました。
科学や文明の発展,また人類の精神的深化・高揚の面で著しい貢献をした方々に贈られる国際賞「京都賞」基礎科学部門の本年度の受賞者でいらっしゃいます,ミシェル・マイヨール博士(スイス・1942年生まれ・ジュネーブ大学名誉教授)による,「宇宙を読み解く:物理学という素晴らしい道具」と題する御講演でした。
博士の受賞理由は,「太陽系外の惑星の発見による新たな宇宙像の展開への多大な貢献」です。博士が最初に発見した太陽系外の惑星は,「ペガスス座51番星b」という惑星です。生徒たちが校内の事前学習会で学んだ“ドップラー法”と“トランジット法”の原理を応用し,発見したことを実際の観測データを用いて解説されました。
ペガスス座51番星bを観測すると,公転周期は4.3日と大変短いことがわかりました。それまでの惑星形成の理論では説明できず,信じられないと思ったそうです。
そのような惑星がどのようにして形成されたのか,博士の研究はさらに進みます。コンピュータで惑星の形成過程をシミュレーションしてみると,回転するガスの円盤の中に暗いドーナツ状の構造ができることが予測されました。粘り強く観測を続けると,実際の夜空でも予測された構造の天体が発見されました。「この天体がシミュレーションのものと同じかどうかはまだわからないけれど,ファンタスティックな発見だった」と話されていました。
博士の最初の惑星発見後,太陽系外の惑星は次々と発見されていき,「比較惑星学」という新しい学問分野が誕生しました。
惑星が次々に発見されると,そこに生命は存在するのかが,気になります。私たち人類は,宇宙の中で特殊な存在なのか,それとも化学的な条件が整えば必然的に発生するものなのか,これを科学的に調べるにはどうしたらいいでしょうか。博士のアイデアは,惑星大気を観測することです。例えば,地球の大気にはオゾン層があります。オゾン層は植物の光合成で発生した酸素から作られたものです。植物の存在しない金星や火星にはありません。オゾンは,ある波長の光を吸収するので,その光が惑星大気から観測されれば,生命の証と言えるかもしれません。今後の研究の展望も含めて,予定時間を超過して生き生きとお話しくださいました。
終了後の質疑応答では,まず西京高校の生徒が元気に手を挙げました。惑星が1つの場合と複数の場合で,主星の速度変化のデータのグラフにどんな違いが生じるか等について質問すると,博士は時間いっぱいまで説明してくださいました。マイヨール博士は,本当に宇宙物理学が好きで,研究に邁進されている姿がとても印象的でした。博士の姿は,西京生にとっても各々の夢を実現するための大きなヒントになったことでしょう。
【参加した生徒の感想です。】
・世界の第一線で活躍されている学者の方から,最新の研究内容や,
「生命とは何か」といった問いまで,たくさんのお話を聞くことがで
き,とても有意義な経験になりました。
・御講演では,系外惑星の発見方法,また地球外生命体の存在の可能性
についての夢のある興味深い話を聞くことができました。普段高校で
は学ばない天文学の話でしたが,物理や化学,さらに生物の話も絡ん
でいて,一つの事象をとってもいくつもの学問が関わっていることを
実感しました。
・自分の住む世界の外には,無限の可能性が広がっていると改めて感じ
ました。容易な話ではありませんでしたが,校内スタッフによる事前
学習で学んだことがとても役に立ち,楽しく聴けました。
・地球の外に目を向け,そして太陽系の外にまでも目を向けている我々
人類は確かにすごいけれど,まだまだ分かっていないことが多く存在
している。博士がおっしゃったように,エウロパの内部や火星に生命
が存在した痕跡があるのかということや,さらに,人間という知的生
命体は宇宙にとって“必然”なのか,はたまた“偶然”なのか等々・・。
僕たちの世代が明らかにしなくてはならない問いは無限であるのだ、
と感じました。
生徒スタッフとして活躍した生徒のみなさん,講演に足を運び博士の御講演に耳を傾けた生徒のみなさん,「謦咳に接する」という言葉がありますが,テレビの画面や活字越しではなく,先生のお人柄を感じながらの本当に貴重でかけがえのない経験ができたことと思います。今日の講演で得たものを自からの糧として今後の学校生活や人生に活かし,積極的に「自らの情熱に従ってチャレンジ」し続けていってほしいと思います。お疲れ様でした!
[写真]
1段目 左:会場入口看板 右:入場前の様子
2段目:マイヨール博士
(右の写真中央で立っている生徒は,質問中の西京生)
3段目 左:博士を囲んで,代表生徒との記念撮影
(花束贈呈者[左側]は,本校2年山河さん)
右:参加生徒集合写真
4段目:本校スタッフ集合写真