社会に羽ばたくグローバルリーダーの育成
エンタープライジング科
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連絡事項等の関係でホームページでのお知らせが遅くなりました。15期生の卒業式の様子を掲載いたします。
2月28日(金)午前10時から,本館7階の京一商西京メモリアルホールにて,令和元年度卒業証書授与式を挙行しました。今年は,新型コロナウイルス感染防止のため,マスク着用のお願いや在校生の参加を見合わせたりと例年とは少し違う式となりましたが,できる限りの対策を講じ卒業式が行えたことはひとえにご臨席の皆様のご協力のたまものです。遅くなりましたが,ご理解,ご協力をいただきました皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
卒業式に臨んだのは,自然科学系コース167名,社会科学系コース112名,総計279名(男子131名,女子148名)のエンタープライジング科第15期生です。
本校PTA会長 稲波文雄様,西京高校同窓会会長 二之湯智様より心温まる祝辞をいただきました。ご多忙の中,来賓の皆様にご臨席賜り誠にありがとうございました。
続く送辞は,在校生代表の西堀修司君が行いました。西堀君は,「部活動を通して,まだ高校生活に慣れていなかった私たちに様々な事を教えていただきました。勉強の事,海外FWなどの行事に対するアドバイスなどを聞くことで不安が和らぎました。時には,先生には相談しにくい悩みごともありましたが,先輩方は頼りやすい存在で相談することができました。」「先輩方の作り上げてこられた伝統を継承しつつ新たな伝統を作り上げていきます。最後に次の言葉を送り,送辞とさせていただきます。To this world,you may be nothing.But to someone, you are the world. 」
この送辞を受けて,卒業生代表の岩崎稀匠君は,l5期生の軌跡を振り返りながら,さまざまなエピソードを紹介してくれました。海外フィールドワークでの貴重な経験が,自分の今後の活動に大きな影響を与えたことを話してくれました。西京祭では執行部員として,また一生徒として経験したことが最高の思い出になっていること,特に助演男優賞を受賞したことなどをユニークに語ってくれました。3年生の思い出も西京祭でクラスが一つになったこと,そしてクラスメートとの友情がさらに確かなものになったこと,そして総合司会として舞台に上がった時の様子を思い出させてくれました。そして,校長先生をはじめとする先生方へ,家族の皆様へ,在校生へ,最後は15期生のみんなへ感謝の気持ちを伝えてくれました。
「今の私はこれからの人生に大きな希望を抱くことができています。どんな形であれ夢を持つことでみんなの人生は間違いなく豊かになると思います。同じ校舎の中で過ごした仲間同士,応援しあい全員が夢を叶えて何年か先にまたどこかで笑って再開できることを楽しみにしています。今まで本当にありがとう。」と力強く答辞を述べました。
西京高校は,15期生の頑張りをいつまでも応援しています。活躍を期待しています。ありがとうございました。
竹田校長の式辞を一部抜粋し紹介いたします。
ただいま,エンタープライジング科第15期生279名の皆さんに卒業証書を授与いたしました。まずは,卒業生の皆さん,ご卒業おめでとうございます。
さて,皆さんにとって西京高校での3年間はいかがだったでしょうか。
エンタープライジング科が開設されて17年になります。みなさんは,これまでエンタープライジング科として積み上げてきた伝統的な取組の一つ一つについてその意味を問い直した学年であるという印象があります。例えば,これまで2年生の後期始めに実施している「受験生宣言」について「それは何の意味があるのか。」「強制的にやるものではなく,自発的にやるものではないか。」と疑問を呈した初めての学年でした。常に自分たちが正しいと思うものに向かって進み,新しい価値を作り出しながら西京をリードしてくれていた15期生の皆さんです。改めて感謝の意を表したいと思います。
(中略)
現代社会は国際化の時代といわれます。多くの国々から大量の物資や人々が流入し,日本からも頻繁に出て行きます。自然資源に乏しいわが国は先端的な科学技術で人々の暮らしを豊かにする機器を開発し,次々にそれを世界へと送り出してきました。海外へと進出する日本の企業や,海外で働く日本人は近年急激に増加し,それと同時に日本で働く外国人の数もうなぎのぼりに増加しています。
さらに企業間では競争が激化し,求める人材のニーズの変化が加速しています。スキルがある人材を求め,新卒市場や転職市場でも,外国人労働者の獲得が話題になる時代になりました。企業は同質な能力よりも多様な能力を必要とし積極的に多様な人材を受け入れ,時代にマッチした能力を確保することを求めています。
このように好むと好まざるとに関わらずグローバル化は進展し,世の中はますます多様性に満ちています。今こそ,私達は多様性について客観的な目を持つことに加え,自分とは違う物の見方や考え方をする人がいるという「多様性を常に意識することができる力」,つまり「多様性への寛容力」を持つことが大変重要になってきていると思います。
京都大学 総合博物館 准教授である塩瀬先生は,ある講演の中でこうおっしゃっています。「自分と考え方も言葉も文化も異なる人たちと日常的に接することは口で言うほど簡単ではありません。違和感も生じることがあるでしょう。しかし,そこから始まって差異が楽しめるかどうかで,その後の人生は大きく左右されると思います。大事なのは自分を常に見つめ直すこと。異質の中に身を置いてみることほど有効な方法はありません。その違和感によって振り動かせて変る自分が,本当の自分かもしれないし,それでも変わらない自分が自分なのかもしれない。」と。
皆さんには多様化し,グローバル化している社会において他者の視点を知ると同時に自らの視点を知ることのできる「対話」を通じて自分を成長させて欲しいと思います。
今年1月にアメリカの科学誌「アトミック・サイエンティスツ」は,地球滅亡までの時間を概念的に示す「終末時計」なるものを公表しました。その時計によると昨年は残り時間を「2分」と表し,これまでで最も短いものでした。今年はさらに20秒進み,残り時間「1分40秒」となり,これまで最も滅亡に近づいたことになります。核戦争と温暖化という二つの脅威に加え,米大統領ら世界の指導者がそれらの脅威に対処するための国際的な取組を弱めていると指摘しています。
そのような「終末時計」が地球滅亡に近づいて行くことを憂い,抗ってこられたのが昨年の十月に亡くなられた女性初の国連難民高等弁務官,緒方貞子さんです。緒方さんは並外れた交渉力に加え,世界的視野をもって人道的支援に尽力された女性です。国連職員や各国首脳から尊敬され,「身長五フィートの巨人」と称賛されていました。彼女が残したメッセージを紹介したいと思います。
「私はいま,非常に日本は内向きになっていると思います。これは外国人労働者の問題もありますし,それから難民の受け入れにも問題があるのです。あまりに自分たちのこと,あまりにも日本の内向きのことばかり考えている。これからを担う青年たちには,自分のことだけでなく,広がりをもった日本をつくっていただきたいと強く思います。」
緒方さんが難民高等弁務官に着任されて,本格的に活躍が始まったのは63歳のときです。それまで国連でも活躍されていましたが「等身大の問題意識」で物事を捉えた彼女の活躍は世界を変えていきました。「文化,宗教,信念が異なろうと,大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから。」こうした視点の中で,彼女の問いかけである「あなたなら,どうしますか?」に対する答えを見つけていく事が,これからの社会を生きる我々にとって,とても重要だと思います。
これから大学で研究し,社会,そして地球規模で活躍・貢献を期待されている皆さんにとって,日頃,当り前だと思っていることを批判的に捉え問題化することが大切です。自分が興味を持ち,どうしても解決したいと思うテーマを世界のつながりの中で是非もって欲しい,いえ,設定してほしいと思います。一体これは,なぜなのだろうかという驚きと,それに対する執着心,尽きぬ興味を持ち,こんなことが実現できれば素晴らしいといった「ドラえもん」のような憧れを持ち続けることが大切なのではないでしょうか。
子供のような純粋な探究心をもち続けることができるか,既存の価値観に縛られることなく自身の信念をもってすすむことができるか,緒方貞子さんのように世界とのつながりの中で物事を考え,失敗や批判を恐れず,敢えて困難なことにチャレンジする姿勢を意識的にもって欲しいと願っています。
自分の幸せのために,そしてすぐ隣にいる人の幸せのために「あなたなら,どうしますか?」この緒方貞子さんのメーセージを最後に送り,これからの日本,そして世界を皆さんに託したいと思います。
最後になりましたが,保護者の皆様に一言お祝いを申し上げます。本日は,お子様のご卒業誠におめでとうございます。また,新型コロナウイルスの影響で一定の制限を加えることになったことをお詫び申し上げます。さて,この三年間,様々な出来事があり,何かとご心配をおかけしたこともあろうかと存じますが,それに関わらず,本校の教育に最後までご理解とご支援を賜わり本当にありがとうございました。本日,お子様方は,大きな夢を抱いて本校を巣立っていかれますが,後に続く在校生とともに,卒業生の想いを引き継いで,西京高校がより良い学校になりますよう,私たちも努力を重ねていきたいと存じます。今後とも,本校教育に御支援を賜わりますようお願い申し上げます。
本日は誠におめでとうございます。
令和2年2月28日 京都市立西京高等学校 校長 竹田 昌弘
写真
1枚目 竹田校長 式辞
2枚目 送辞 西堀君
3枚目 答辞 岩崎君
4枚目 三年生担任団