その「わくわく」がありたい未来をソウゾウする
美術工芸科
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先日本校ホームページでご紹介させていただきましたが、8月4日から6日に能登半島地震被災者支援のため、本校では代表生徒3名と引率教員1名を派遣し、活動を行ってきました。
その様子を報告させていただきます。
【1日目】金沢に到着後、本校と以前より交流のある宮城県宮城野高校さんと合流し、金沢美術工芸大学でミーティングをしました。まず、金沢美大卒業生の楓さんによる講演を拝聴し、珠洲市の現状を伺いました。楓さんは、珠洲で元々アートプロジェクトを立ち上げ活動されておられ、地域に根ざした取り組みを行なっておられました。昨年5月の地震でも、珠洲市は深刻なダメージを受けています。その際に既に、この珠洲市の未来を終わらせるのか、続けるのか、続けるならどうしていくかと考えていらっしゃいました。そこにさらに追い討ちをかける元旦の地震で、その瞬間「珠洲は終わってしまった」と感じてしまったそうです。
また、家などを公費解体するかしないかを迫られ、感情が追いつかないまま決断しなければならず、また決断できずにいる人もいて、いずれにしても苦しい状況にあるとのことです。災害では、その場所を諦め新しい生活を始める人も、心が追い付かず決断が難しい人も、その土地を守りたい人もいます。どれも間違いではないものの、考え方の違いにより、徐々に分断しがちだそうです。
楓さんは、「その分断を埋めるメディウムのような存在を目指している。それがアートにできること。被災した人も、被災しなかったけど傷ついている人の心のケアになるものが必要。自分は銭湯をやったり、場を提供したり、頼まれごとをこなしたりしている。」と話されていました。
生徒は、「お話の中で、被災していない人でも被災した地域を思い辛くなることがあるだろうけど、それは悪いことではないという話が凄く印象に残っています。確かに自分も、自分が被災した訳でもないけれど辛くて、でも被災した方はもっと辛いはずだからと自分は辛いと思わないようにしている事がありました。このお話から地震はその被災地の方だけでなく、周りの人も辛くなることがわかり、それを解消するには一刻も早くその被災地が復旧するよう支援をすることが必要だと思いました。」と語りました。
講演のあとは大学内を案内していただきました。金沢美大も昨年10月に新築移転したばかりで、非常に美しいランドスケープデザインの設計で、生徒も教員も大興奮でした。
【2日目】「絵本と小物づくり-みんなでつくらんきゃ!!」イベント当日です。
イベントでは、支援物資を受け取りに来られた被災者の方に、「能登で思い出に残る料理」「被災後に印象に残った料理」の二つを聞く調査を二時間ほど行いました。
珠洲市には独特の料理があり、金沢でずっと育ってきた大学の先生でも聞き慣れない言葉が飛び交う状況でした。生徒は必死に質問を繰り返したり絵を描いたりして、料理を理解しようとしていました。被災者の方々は、最初は話すのも嫌という方も多かったですが、話し始めると止まらず、お互いの地元の料理の話で盛り上がっていました。
その後、一時間ほどミーティングをして、絵本の方向性を決めていきました。絵本は今年中の完成を目指します。
イベントを終え生徒は、「私は今回ボランティアに行く前は自分がボランティアをするというイメージでしたが、実際に行ってみると色んな方から楽しかった思い出や懐かしいお話が聞けたりして逆に自分が元気づけられました。お話の中で、珠洲市にはキリコという神輿のような物を引き、町を練り歩くという伝統的なお祭りや、べろべろという出汁で解いた寒天に卵を入れるご飯やお味噌汁の中に豪快に鯛を入れた物など色んな伝統について教えていただき、改めて珠洲市や能登半島の良さが知ることができました。そしてそんな地域の震災前の姿を取り戻すために私たちが出来ることは震災や震災前のその地域の良さを忘れず絶えず支援を続けることだと分かりました。」と感想を述べました。
金沢美大のスズプロを統括しておられる鍔教授、高橋教授がセッティングしてくださり今回のワークショップ開催が実現しました。また、これまでにも西本准教授、稲垣准教授や、スズプロの学生さんたちのアイデアがありました。このような機会を本校生徒に与えてくださったことに多大なる感謝をしています。
完成した絵本は何かの機会に発表したいと思います。
【3日目】この日は市内見学をしました。まずは生徒の希望で、兼六園へ見学に行きました。宮城野高校の生徒さんも本校生徒も、広々とした庭園に根付く迫力のある大木に魅了され、いつの間にかスケッチ大会に…。その後は金沢21世紀美術館を見学し、「特別展 Line~意識を流れに合わせる~」とコレクション展を楽しみ、帰路につきました。
改めて、金沢美術工芸大学の皆様、宮城野高校の皆様、ありがとうございました。今後も復興のために何ができるかを考え、続けて行きたいと思います。
夏季休業中も全国で地震や津波、台風の被害があり、関西では南海トラフ地震も心配されています。今一度備えを見直しましょう。生徒の皆さんは、様々なことを自分事として捉え、被害により傷ついた人がいたら、支えるために行動できる人になってください。アートは、自分が楽しむためだけのものではありません。見た人が癒されたり、何かを伝えたりするために、周りのために、今培っている力を使えるようになってほしいと願っています。また、支援の形はモノだけでなく、人との関わりや場を作ることでも支援になるということを覚えておいてください。
宮城野高校の2年生とは、10月の美工作品展で再会する日を楽しみにしています。