世界をつなぐ越境者
~Beyond the hill today, Beyond yourself tomorrow~
普通科(進学型単位制)
〒605-0000 京都市東山区今熊野悲田院山町5-22[MAPを見る]
TEL. 075-561-4142 FAX. 075-551-9046
4月8日(月)午前10時から、令和6年度入学式を挙行致しました。日吉桜が美しく咲き誇る中、入学生は、期待を胸にはずませ入学式に臨みました。
【太山学校長の式辞】
今年は桜の開花が例年よりも遅く、日吉坂の桜も本日の入学式に合わせて満開となり、新入生の皆さんを待ち望んでいたかのようです。
ここに、令和六年度京都市立日吉ケ丘高等学校入学式を挙行するに当たり、京都市教育委員会事務局学校指導課指導主事、上杉 まり 様、学校運営協議会理事長および同窓会長 審 政義 様、教育後援会会長 千賀 修 様、PTA会長 南 了仁 様を始め、多数の御来賓、保護者の皆様方の御臨席を賜り、心より、お礼を申し上げます。
ただ今、入学を許可いたしました新入生の皆さん、入学おめでとうございます。教職員一同、在校生とともに、皆さんを心から歓迎いたします。
本校は、東福寺・泉涌寺など名所旧跡に囲まれ、校舎から京都市内が一望できる小高い丘の上に位置し、都会とは思えない閑静な場所にあります。
なぜ、日吉ケ丘高校がこの小高い丘の上にあるかについて入学生の皆さんにお話をしたいと思います。
本校は、昭和24年に開校しましたが、開校当時の学校の所在地は現在のこの地ではなく、東山区今熊野日吉町、のちに京都市立芸術大学となっていく敷地に居候した形での開校でした。そのため、初代校長の横山佐久郎先生は、新校舎の建設にあたり、建設候補地をあちこちに探していました。横山校長は、「学校は展望のきく高地でならないといけない」という強い信念を持っており、候補地は東山区内に何か所かあったようですが、最後に現在のこの地に巡り合ったとき、ここだと確信しました。
しかし、この地の所有者を調べると、皇室の用地であり、皇室経済会議や国会での承認が必要であるなど、そう簡単には用地取得ができないことが判明しました。普通の人ならここであきらめることが多いのですが、横山校長は、あらゆる人脈を活用し、役所の関係者や政府要人の協力も得ながら、一つ一つ難題を解決していき、あとは国会で承認されるのを待つのみ、というところまでこぎつけました。ところがその期に及んで進駐軍から差戻しとなったのです。戦後まもなくのこの時期は、日本はGHQの占領下にあり、皇室財産の払い下げに待ったがかかったのでした。あわてた横山校長をはじめとする学校関係者は急遽東京まで出向いて陳情活動を行うなど、学校用地取得のために多大な苦労を重ねます。そしてその粘り強い行動の結果、最終的にこの用地を取得できたのです。
また、実際に山を切り開く大工事が京都で初めてだったということも難題の一つでした。これに関しても当時それが可能な大阪の業者を見つけ出し、山を切り開き、土地の造成が行われました。そして、当時の建築界の大家、堀口捨巳氏に設計を依頼し、堀口氏の手による新校舎が完成、無事、日吉ケ丘高校は昭和27年にこの地に移転してきました。
初代校長横山先生が高台にこだわった理由は、山口県萩市にある松下村塾が山の中腹にあり雄大な日本海を見渡す立地にあることを目の当たりにし、このような場所で学んだからこそ幕末の英雄たち、明治維新の立役者たちを輩出できたのではないかと思ったからです。そして、日吉ケ丘高校も未来や社会を切り開いていく若者の育成のために展望のよい最高の立地で学べることを目指したのです。
それから日吉ケ丘高校はこの地で教育活動を続け、70年以上が経ちました。
今から5年前、日吉ケ丘高校は教育目標を整理しなおし、育てたい生徒像「世界をつなぐ越境者」を設定しました。「世界をつなぐ越境者」に込められた意味は、身の周りの社会や世界の中の様々な境の両側にある文化や歴史、価値観の多様性を理解した上で、その境を越え、境の両側の世界をつなぐ架け橋となる人になってほしいというものです。ここには自分の中にある壁や社会に存在する様々な境を越えて挑戦し、自分の世界を広げ、新しい価値を作り出す人に育ってほしいという願いも込められています。
それと同時に、その「世界をつなぐ越境者」に必要な資質能力として、日吉ケ丘でつけたい7つの力HIYOSevenを設定しました。その7つの力の中に、「俯瞰力」、そして「挑戦力」があります。
初代校長横山先生が目指した「展望のきく高地」という言葉には、実際に京都市内を見渡せるすばらしい展望があるというだけでなく、自らの将来の展望も含む「俯瞰」する視点や、未来に向けて「挑戦」していく視点が大きく含まれていると感じます。まさしく、「世界をつなぐ越境者」になるためのHIYOSevenの力です。また、「世界をつなぐ越境者」の英語のサブタイトルはBeyond the hill today、 Beyond yourself tomorrow 「今日は丘を越えて学校に通い、明日は自分の限界に挑戦しよう」という意味ですが、奇しくもここには日吉ケ丘の「丘」が言葉として表されています。70年の時を経て、図らずとも創設時の思いが具現化されたような気がしてなりません。
入学生の皆さんには、日吉ケ丘高校がこの地にあるということに誇りを持ち、これからの3年間を過ごしてほしいと思います。この丘の上で、「世界をつなぐ越境者」になるべく、将来を展望し、未来に向けて数多くの挑戦をしていってほしいと思います。
本校には、「世界をつなぐ越境者」に近づくための越境の機会がたくさんあります。校内留学施設「HELLO Village(英語村)」があり、英語教育や国際理解教育が充実しています。そこでは、海外の文化に触れる機会や、日本や京都の伝統文化を学ぶ機会、留学生など多様な背景を持った人との交流の機会など、越境の機会がたくさんあります。また、昨年度より海外の姉妹校との交流や、海外研修旅行も再開しました。もちろん授業の中でも、総合的な探求の時間を中心に、越境の機会はたくさんあります。自ら進んで越境の機会を利用して新たな自分を発見し、大きな世界に羽ばたいていくための土台を築いてほしいと思います。
最後に、保護者の皆様に一言御挨拶申し上げます。本日はお子様の御入学、誠におめでとうございます。私たち教職員一同は、お子様が自らの未来を切り開き、健全に成長できるよう、全力で支援して参ります。
そのためにも、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながら、相互に補完しあい、連携を密にしていくことが重要であると存じます。何卒、本校教育への御理解と御支援を賜りますようよろしくお願いいたします。
新入生240名の皆さんが、本校での3年間の高校生活を通してこれからの時代を力強く生きていくことができるよう、大きく成長を遂げることを心から期待いたしまして、式辞といたします。
令和6年4月8日
京都市立日吉ケ丘高等学校長
太山 陽子
新入生代表の宣誓は、新しい高校生活へ挑戦する意志が感じられる、すがすがしいものでした。
PTA会長様からは、具体的なエピソードから、何事にもあきらめない姿勢を高校生活で身に着けてほしいという激励のご祝辞をいただきました。
新入生の皆さん、ようこそ日吉ケ丘高校へ。皆さんの高校生活が充実したものになることを心から応援しています。