すべては君の「知りたい」からはじまる
普通科・探究学科群(人間探究科・自然探究科)
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陽ざしに温かさを感じる本日,20期生生徒諸君の第73回卒業式を挙行しました。卒業生1人1人が凛々しく爽やかな「自立する18歳」としての姿を見せてくれました。そして,力強く巣立っていきました。
新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言が解除されたところですが,密集の回避や時間の短縮等,拡大防止にできる限り留意しながら実施しました。みなさまに趣旨をご賢察いただき,またご協力をいただきましたことに,深く感謝申し上げます。
以下に,卒業式式辞の一部を紹介します。
20期生諸君,卒業おめでとう。君たちの卒業を心から祝します。
君たちが卒業とともに手にする自由は,高校生であるというある種の束縛からの解放だけでなく,保護からの離脱も意味します。束縛は感じやすいものですが,保護は気づきにくいものです。自分を守ってくれるものが乏しいと思われる世界にただ独り立つ,ということを想像してください。
今や,世の中のほとんどのものが,他者からの依存に応えようとデザインされているように思われる中で,私たちはその利便性ゆえに,依存していること,守られている側にいることを忘れてしまいます。私たちにとって,他者や社会というものは,自分の前に立ちはだかるものかもしれません。しかし,私たち自身がそれに向き合い,その中に依存先を開拓していくことで,やがて,私たちを支えてくれるものに変わっていくのでしょう。
今後,これまであった時間の区切り,行動の制限,それらの束縛はどんどん緩やかになっていきます。そして,保護も確実に希薄になっていきます。なぜ,保護が希薄になるのか。それは,君たちが「誰かに何かに守られる側」から,「誰かを何かを守る側」に立場を変えていくからです。謙虚に自らを見つめ,自分のもつ能力と情熱を自分以外の人や社会のために使ってほしいと思います。成長するというのはそういうことでもあります。
自由になって束縛からも保護からも放たれるとき,1人の人間としてどのように生きるのか,という問題に直面します。答えはさまざまあるでしょうが,どのような答えにせよ,自分の責任で求め,導き出すほかありません。それはとても難しい取組です。覚悟が必要になります。ひとり困難を前にして,「人間は実に弱い存在である」ということを思い知ります。臆病な自分に気づきます。ただし,臆病であるからといって,恥じる必要はありません。大切なのは,困難から逃げないことです。手に汗し,ひざ震える思いの中で,逃げずにこらえることはつらいものですが,そうして耐え忍ぶこともまた勇気と呼ぶのです。自分自身に誇りをもって,1人の人間として生きるために,自由に生きるために,どうか君たちの中にほんものの勇気を育んでください。
人間は1人で生きていません。また,1人では生きていけません。個人のかけがえのない大切な生活は,私たちの生きる社会や世界の動きと無関係には存在しない,ということを忘れないでいてください。人間の未来に希望を見出す営みは,過去を振り返り,現在を知ろうとする努力から始まります。私たちの不断の努力と見識によって,成熟した社会を築いていくことが必要です。誇り高く自由に生きるためには,自らが,真に豊かで平和な社会を創ろうとする一員として,行動することが必要です。
20期生諸君,みなさんは「虹」と呼ばれてきました。谷内秀一前校長が3年前の入学式で,「虹」に託す思いを語られました。自分や自分たちとは異なる多様な考えを否定,排除するのではなく,受け入れ,尊重すること。わかり合えないからこそ,わかり合おうとする態度と力を,ことばによる対話を通して育ててほしい,という思いでした。
君たちの中のある人が,クラスの日誌の中に書いていました。「この1年間の中だけでも,驚くほど私は変わりました。中学3年生の自分と比べると,もはや別人のようです。高校での3年間でたくさんのことを経験し,変わりました。いつまでも感謝の気持ちを忘れずに走り抜けたいと思います。」また,ある人はこう言っていました。「堀川での人との出会いが自分を変えてくれた。総力をあげてぶつかってくる人たちに囲まれていた。そんな堀川らしさを心ゆくまで浴びた自分がいる。」
人は環境を生かし取り組むことによって,成長することができる。君たちは君たち自身の力で人を変えることができる。君たちはこれから歩む人生において,謙虚に学び,人と交わり,多様な経験を重ねていきます。見えるものをまっすぐに見て,聞こえるものをじっくりと聴くこと。そしてまた,想像力を豊かにし,見えないものを思い,聞こえない声を受けとめること。そのために,君たちのもつ力を正しく,余すことなく使ってほしいと思います。自分が願うものを,自分らしく追い求めていこうとしつづける君たちを,母校である堀川はずっと見守っていきたいと思っています。
20期生のみなさん,ここに1つ,堀川に大きな歴史を刻んできたみなさんに対し,心から感謝を伝えたいと思います。ありがとう。
橋詰 忍