すべては君の「知りたい」からはじまる
普通科・探究学科群(人間探究科・自然探究科)
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4月8日(金)10時より、堀川高校アリーナにて入学式が行われました。
天候に恵まれた朝となり、新入生と保護者の方々を桜の花が出迎えました。
玄関入口の「入学式」の看板で写真撮影する新入生と保護者の姿もみられました。
本校吹奏楽部の演奏のもとに新入生が入場し、厳かな雰囲気の中で式は進行しました。
学校長式辞では、新入生18期生のことばは「さなぎ」と名付けられ、恩田校長から「さなぎのように、混沌を受け入れる器を堀川で一緒に作ろう!」とメッセージが贈られました。
以下、恩田校長の式辞です。
本校は,1908年,明治41年に京都市立堀川高等女学校として設立され,1948年,昭和23年に学制改革により京都市立堀川高校として発足しました。そして,1999年,平成11年から,この校舎で京都市の教育改革のパイロット校として新たな歴史を刻み始めました。この新たな挑戦の年輪として,ここに集う新入生を18期生と呼びますが,それまでの堀川高校を否定してのことでは全くありません。公立で創設以来100年以上の高校で,現在の名称が続いている学校は堀川だけです。108年間,変わることなく受け継がれる自主自立の精神をもった二兎を追う「若き狩人」のマインドを引き継ぎ,時代の変化の先を行く新たな決意で教育改革を一歩ずつ前に進めようと決意した改革途上でもあります。アトリウムに掲げた「ひとつになる,高みをめざす,ひとりになる」堀川憲章の精神を,新入生諸君は心に受け止めてください。第1回合格者登校日に,学年主任が君たちと交わした三つの約束を覚えていますか。第1は「学校は学びの場だ」。第2は「学校は小さな社会だ」。第3は「学校は楽しいところだ」,でしたね。教室掲示もさせていただきますので,この言葉がアクションとなるよう祈ります。
さて,本校に入学された皆さんは,多少の差はあっても資質,能力という点では「かなり大きな子ども」です。この「かなり大きな子ども」から「小さな大人」に本校での取組を通してブレイクスルーするということは,青虫が成熟して「さなぎ」に変異する,大きな変化であり,脱皮することを目指すということです。ブレイクスルーというのは教育の世界では「自分の限界を超えること」ではないでしょうか。「自分の限界を超える」とは言葉は簡単で格好いいですが,それほど生やさしいことではありません。というのは「これが自分の限界だ」といって達成できるようなものは「自分の限界」とは違うように思えます。ブレイクスルーとは今までの自分全体を上から見通せるところに行く。いわば離陸することではないでしょうか。身につけた高度な知識,探究心を通してそのさきにある新しい未知のものをつかみに行くということです。そのためにはオープンエンドなチャレンジが必要ではないかと思います。「うまくいく方法」「失敗しない方法」だけを学んだ秀才は今までの技術のマネや過去に起きた問題の対応は上手にできても,「新たな“もの”をつくる」という能力が失敗を恐れるあまり,なかなか身につかないといわれます。チャレンジに失敗はつきものです。
蝶は,青虫から成虫になるまで,2回の節目を迎えます。「青虫からさなぎになるとき」と,「さなぎから成虫になるとき」です。蝶になるためには,この過程を経なければなりません。青虫は,さなぎの中ではその原型を留めることなく,どろどろ,ぐちゃぐちゃ状態にあることは知られています。そのメカニズムはまだわからないことが多いということですが,とろとろ,どろどろ,ぐちゃぐちゃを受け止め,保持する器としての「さなぎ」 の役割です。すなわちとろとろ,どろどろのカオスにありますが,それを抱え,受け止め,包み込むしっかりとした良質な容器があるかないか,という点にあります。さなぎの中は,とろとろ,ぐちゃぐちゃでも,成虫に変容するための,力やエネルギーに満ちあふれており,また本能に基づいた秩序が機能していることと思われます。では,人間は自己変革できるのでしょうか。力やエネルギーに満ち満ちているのですが,器がないために変容することができない状態,苦しみがあるといえます。とろとろ状態,混乱状態は,ものすごい力,エネルギー,熱などを発生させます。そうした力,エネルギー,熱,内圧によって破壊されない「圧力鍋」のような器を本校の取組で創ろうではありませんか。
次のような情況を創造してください。道端の草むらに蝶のさなぎを見つけました。さなぎは,殻を破って 外に出てこようとしている真っ最中でした。それから30分待っても,一向にさなぎは殻を破ることができません。一生懸命にもがいてはいるのだけど。さらに1時間が経過した頃,「手助けをしてあげたい」という感情を押さえきれず,ハサミで殻を切ったのです。すると,さなぎは殻から簡単に出ることが出来ました。しかし,何か妙でした。殻から出て蝶になるはずだったそのさなぎの羽はグシャグシャで,縮んでいて,そして胴体は膨れ上がっており,その姿はとても蝶とは言えず,さなぎとすら言えませんでした。もちろん,そんな状態で羽ばたくことなどできるはずもなく,そのさなぎでも蝶でもない奇妙な生き物は,歩いて去って行こうとしているだけでした。決して悪気はありません。ただ,さなぎの手助けをしてあげたかっただけです。しかし,その手助けは,さなぎが蝶に成長する事を阻んだだけに過ぎませんでした。可哀想だと思ったさなぎのもがく姿は,さなぎにとっては,必要なプロセスだったのです。もがいて,もがいて,そして殻から出るというプロセスが,さなぎが蝶になるための必要不可欠な事だったのです。さなぎにとっては辛く,大変な作業だったかもしれませんが,「ひたすらもがく」という行為を経た先の,「胴体から養分を羽に持っていく」という“答え”が必要だったのです。胴体の養分を羽に持って行く事で胴体を小さくし,さらに羽を広げることによってはじめて殻から出ることができる。羽ばたけるようになるのです。
多くの人は,この「もがく」段階でチャレンジをやめてしまいます。何かのスキルをマスターしようとした瞬間,高い目標を見つけてチャレンジをはじめようとした瞬間は熱意に満ちていても,最初のもがく作業が凄く地味で,辛くて,大変だからすぐに止めてしまいます。しかし,その地味で辛くて大変なプロセス自体が,チャレンジを達成するために必要不可欠なプロセスなのだということです。皆さんが持っている目標が紛れもない高いハードルを伴うチャレンジであるならば,楽して手には入りません。「日々の学習」と「探究活動」も同じだと思えてなりません。「辛い」「苦しい」「もうやめたい」と思う瞬間は必ず訪れますが,その瞬間が来たら同時にこうも思ってください。「ピンチをチャンスに変えるときがきた!」
破るのが大変なほどきっちりした器を造って,この3年間を人生や生き方が大きく変わるステージに皆でしていこうではありませんか。そんな思いをもって18期生の皆さんを「さなぎ」と名付けます。日々の学習と探究活動の二兎を追い,さらに委員会,リーダー・スタッフ活動,部活動,自主ゼミの取組を通して大きく成長してほしい。そして,他者の成功に心から拍手を送れる人間として成長してください。
さなぎの18期生諸君,自己変革し,打たれ強い器となり,堀川の歴史を刻もうではありませんか。
平成28年4月8日 学校長 恩田徹
写真上:桜の出迎えを受ける新入生と保護者
写真中:式典
写真下:新入生代表宣誓