すべては君の「知りたい」からはじまる
普通科・探究学科群(人間探究科・自然探究科)
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8月31日と9月1日の2日間、本校において文化祭を実施しました。台風10号の影響が懸念されましたが、大きな混乱なく終えることができました。
PTA役員の方々はじめ、保護者、外部関係者、一般の方々など、多くのみなさまのご理解とご協力をいただき、ありがとうございました。台風の動向が推測しにくく直前の実施判断となってしまい、ご心配をおかけいたしました。申し訳ございませんでした。
「息(いぶき)」の学年である3年生にとっては最後の文化祭。6クラスそれぞれが、本館吹き抜けのアトリウムを舞台として、約45分のパフォーマンスを行う。どのクラスも春から検討と準備に取りかかる。自分たちは何をめざすのか。伝えたいメッセージは何か。ストーリーをどう構成するか。表現豊かな演出や音響、個性が活きる役割分担、各パートや全体の練習計画。手と頭を動かし続ける生徒たち。
例年、3年生は自主的にアトリウムパフォーマンス委員会を立ち上げる。生徒会執行部や先生たちからの支援を得つつ、自分たちでこの取組をより良いものにし、学年の圧倒的な存在感を放ちたいとの思いから、各クラスの代表生徒たちが何度も委員会を開き、検討を重ねる。
7月12日の3年生学年集会。先生たちが夏の学習予定やポイントなどを伝え終えると、委員会の中の委員長であるリーダー生徒が1人で壇上に立つ。各クラスが切磋琢磨して文化祭準備を進める中、この夏をさらに高みをめざすための機会にしたいとの熱い想いからだ。学年としてありたい姿を、ことばを駆使して力強く伝える。
「息よ、」
「興せ」 エネルギーを、本気を、熱狂を
「紡げ」 思いを、未来を、伝統を
「結べ」 朋と、クラスを超えて、学年を超えて
「薫れ」 24期生らしく、周りを巻き込んで、自分らしく
夏休みが終わって授業が再開する。台風の足音が少しずつ聞こえてくる。先の読めない状況の中、生徒会執行部や各学年の関係生徒が先生たちとともに、日々更新される台風情報をもとに、あらゆる想定をしながら計画を修正し、順延された場合の対応策を検討する。また、文化祭前日や前々日に休校となった場合に備え、直前本番リハーサルを前倒しして実施する。
3年生各クラスともに、少しでも時間をかけて完成度を高めようと総力をあげる。そんな直前の8月27日、学年集会で壇上に立ったリーダー生徒が私を訪れ、穏やかながら思いを込めて訴えかけてきた。学年主任もそばで聞いている。
「計画が変更され時間が削られる中、どのクラスも工夫して懸命に取り組んでいる。それでも時間が足りない。みんなが納得のいく形で本番を迎えたい。」涙ながらにそう言って、2日間それぞれ1時間ずつの時間延長を要望として私に投げかけてきた。委員会での議論を経て考え出した案だ。
私は、3年生の現状を尋ねてみたり、「みんなの納得」とはどういうものかをいっしょに考えてみたり、もし時間延長となった場合の使い方に助言してみたり。最終的には、学校全体で共有されている決まりごとへの理解を促し重みを確認した上で、3年生の特例的な申し出を受け入れた。「素敵なものを創ってください。全力で応援しています。」
そのあと、その生徒が今の心境を静かに吐露してくれた。「周りのみんなには、悔いのないよう精一杯やりきってほしいし、私はその環境を整えていきたいとずっと思ってやってきた。でも、それによって周りのことばっかりが気になってしまい、いつの間にか身構えてしまっていた。自分は何をしたかったのだろう。」
8月29日。その生徒が1枚の紙いっぱいにメッセージを綴り、3年生全員に配布した。自分をあらためて見つめ直し、自分に正直に悔いなくやりきりたいといった思いにあふれていた。
歩みを止めることなく進み続ける24期生のみんなへ(抜粋)
「私は委員長として、24期生の一員として、1秒1秒を大切にして高みをめざし朋と切磋琢磨し、パフォーマンスをより良いものにしようとがんばるみんなのキラキラした姿をたくさん目にしてきました。」
「『あの1時間があったからこそ、自分たちのめざすものに一歩でも近づくことができたんだ』と胸を張って言えるよう、少しの時間も無駄にしてほしくない。」
「悲観的になるのではなく、みんなで集まれる限られた貴重な時間を、どのような目的を持って計画を立てて使えば素敵なものにできるか、今一度考え直す機会にしてほしいと思います。」
「みんななら、まっだまだやれます。」
「台風の暴風にも負けない、24期生にしかない色をまとった強く、大きく、勢いのある『息』を『巻き興し』てください。」
3年生の学年主任もまた、このメッセージとほぼ同時に、学級通信を通して生徒たちを鼓舞する。(抜粋)
「正真正銘の、そしてたった一度きりしかない『本番』なんだ。」
「一人ひとりが心の中に台風を起こそうじゃないか。以前のじぶんには想像もできなかったようなパワーが湧き出てくるはずだ。そして、風が風を呼び、24期生として、ひとつの巨大なハリケーンへ!」
「すべての声を、演技を、ダンスを、そして生き様をぶつけよう。」
ここで少し、文化祭にまつわる過去の出来事を紹介したい。堀川高校の文化祭が台風の影響で土曜日が休校となり、土日の予定が日月にスライド順延されたことが、ここ25年間で1度だけあった。11期生が3年生の時だ。
3年生の本番はすべて2日目に実施される。それは当時も今も変わらない。スライド順延のため、日曜日のプログラムはそのまま月曜日にずれ込んだ。そのときの3年生は堀川高校の最高学年としての証しと誇りを、家族や友人をはじめ数多くの人たちに見てもらうことを1つの大きな励みとして春から取り組んできた。ただ、月曜日となれば観客の数は圧倒的に減り、生徒たちの望みが十分に叶わない。
スライド順延を知らされた生徒たちの落胆や憤りはすさまじいものだった。普段は冷静で頭の切れる女子生徒が、形相を変えて詰め寄ってくる。ヤンチャでムードメーカーの男子生徒が、涙を抑えきれず個室にこもって出てこない。状況を理解しようとするが、葛藤に苦悩する生徒たちであふれていた。
3年生の代表生徒たちは、残されたわずかな時間の中で、クラスや代表者どうしで真剣に議論した。自分たちの要望やその実現のための代替案を持って、生徒会執行部の人たちや先生たちと話し合った。最後の文化祭に並々ならぬ覚悟をもって団結し挑み続けてきた3年生の意地。その一方、自分たちだけのものではない文化祭。生徒会執行部や1,2年生の人たちへの配慮と感謝。さまざまな感情が錯綜していた。
全方位への想像力を働かせ、見えないものを見るために視野を拡げる。あらゆる価値や存在を感じつつ、他の意見に真摯に耳を傾ける。でも、周囲に意識が向きすぎて、自分の良さが閉じ込められてしまわないように。そうしながら、ことばによって総意を整理し、合意を形成し、情熱的にぶち当たっていく。
11期生3年生はそんな時間を重ねた末、月曜日に自分たちの力を余すことなく結集させ、洗練度や完成度はさておき、感情を爆発させ、若々しく瑞々しく「正真正銘の『本番』」をやりきった。
今回の文化祭に向けて取り組むにあたり、3学年ともに大なり小なりの困難とその解決に向けた紆余曲折のプロセスを経て、当日を迎えたことだろう。その道の長さや険しさとやり終えたときの充実感は比例するものだと感じている。
生徒会執行部をはじめ、各学年や部活動などの中心メンバー、生徒全員、そして関係のみなさんの力により、堀川高校が「ひとつになる」ことができた2日間だったと感じています。ありがとうございます。その一方で、「みんななら、まっだまだやれます。」私も本当にそう思っています。先輩を越えていく、歴史を塗りかえ創りあげていくみなさんのさらなる飛躍を期待しています。
文化祭を終えた今、24期生のリーダー生徒が7月12日の学年集会で最後に発したことばが頭に浮かぶ。
「文化祭で燃え尽きることなく、エネルギーを将来へ。」
橋詰 忍