すべては君の「知りたい」からはじまる
普通科・探究学科群(人間探究科・自然探究科)
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寒さが少し緩み、陽ざしに温かさを感じる季節となりました。(中略)
ただ今、二百三十九名の卒業生に対しまして、本校における学業を成就したことの証として、栄えある卒業証書を授与いたしました。
卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。みなさんは、「立志」「勉励」「自主」「友愛」の校訓のもと、「自立する十八歳」たらんとして、本校の特色ある学習活動と探究活動に対し、積極的に、かつ、主体的に自己の啓発に努め、三年間の教育課程を無事修了されました。明治四十一年1908年、堀川高等女学校創立以来一一〇周年、昭和二十三年1948年、京都市立堀川高等学校創立以来七十周年を迎え、本日、第七十一回卒業式を挙行することとなりました。平成十一年、一九九九年四月、普通科に加えて人間探究科、自然探究科を設置してから、十八期生、堀川高等学校創立以来七十一期生として、みなさんは歴史ある第一歩を新たに歩んでいきます。
その第一歩を踏み出すにあたって、堀川高校の校訓について、少しお話します。みなさんは受け止めながら、堀川高校での活動そのものであったことを確かめてみてください。自立する十八歳に育つためには、校訓の実践は欠かせません。それは、みなさんの三年間の堀川高校での活動のいたるところに、組み込まれていたのです。
まず、「立志」とは、みなさん自身が持つ可能性を信じ、勇気を振り絞って目標達成を目指し、実現に向けて取り組むということです。目標なしに意味ある行動をとることはできません。ただし、持つべき目標は、当然、確かなものでなければなりません。確かであるかどうかということは、正当であるかどうかということです。それを判断するためには知識と知恵、教養が必要となります。それらを身につけるために、これまでみなさんは学んできましたし、これからも学んでいきます。
そして、「勉励」。これは、目標達成に向けて努力を重ね、目の前に立ちはだかる困難に立ち向かう姿勢のことをいいます。「自主」とは、自らをメタ的に認知し、適切な判断力と批判力を持って責任ある行動をとることをいいます。この二つは、達成すべき目標を自らの内に抱き、力の限りを尽くして真摯に取り組むことで、結果の如何に関わらず、成長していくことができるということです。たとえ失敗したとしても必ず得るものがあり、成長していきます。
「友愛」は、周囲をじっくり観察、分析して、想像力、イマジネーションを高め、思いやる心のことをいいます。普段、見えていないものを見ようとすること、聞こえない声に耳を傾けるように、それは想像力の大切さを意味します。
以上のように、堀川高校生活、三年間を通して、校訓は、君たちに「楽しんどい」という経験値とともに内在されてきたのです。
「立志・勉励・自主・友愛」の根底にあって、それぞれの活動を支えているのが、「友愛」の「愛」なのです。「愛」という字形は、金文で、後ろを顧みて立つ人の形を表わす字形と「心」の字形が合わさった会意文字で、うしろに心を残しながら立ち去ろうとする人の姿を表したものです。日本古来の武道でいう「残心」に通じています。目標達成にむけて、また達成後に、心を残すとは、周囲への視点と自分自身の位置との関係に思いを馳せ、真摯に振り返ることです。それは、未知へのイマジネーションとイノベーションという未来につながっていくのです。ここで大切になるのが、周囲への視線と感知です。それはどちらも受け取る力。ただし、ここでいう力とは能力ではなく「心」のことを意味します。未来への思いとイマジネーションの想像、それはどちらも発信する力。この力も能力ではなく、「心」のことを意味します。校訓は心が基本形となっています。
さまざまな問いに対する解決に向けた糸口の一つとして、規定から外れた思考、ちょっとした視点の変換があります。それが、新たな気づきや発見につながり、おさまりどころを形成していきます。そのような世界にむかって、さなぎたちは羽ばたいていきます。どのように羽ばたくのか。それは、どう自己変革してきた三年間であったのかということにもなります。
いくつか私なりに振り返ってみますと、入学当初の花背山の家での宿泊研修からスタートした堀川高校生活。「探究活動のプロセスを学べ」、「Make~仲間との団和~」、「光を支える影となる」という係ごとの目標をたて、探究基礎のゼロ時間目という位置づけの花背山の家の研修を、戸惑いながらも必死にやり切りました。一泊二日の活動を終え、山の家から帰る直前の退所式で「ありがとうコール」をしたのを覚えているでしょうか。本来であれば、一年生が「ありがとうコール」を初体験するのは、九月文化祭の閉会式です。ですが、みなさんは、一年生の初っ端に体験したのです。その時の団長として付き添って、退所式での挨拶で、ありがとうコールをフライングしたのが、実は、当時、副校長だった私でした。みなさんの一生懸命で、健気な活動を二日間見て、思わず一体化したいと思い、やってしまいました。花背の活動は、可能性を信じて、目標達成を目指した「立志」そのものでした。
そして、海外研修、この時のみなさんの立てた目標は、二つでした。「自分の可能性を開拓する」、そして「国境を越えて「知りたい」を追い求める」でした。私は日本にいて、みなさんの海外での活動、チャレンジの報告を現地から受け、楽しみながら、毎日、学校HPにアップをし、帰宅途中の夜空にかかっている細い月をみながら、さなぎたちも同じ月を世界各国から見ているんだろうなと思いを馳せていたのを思い出します。海外研修を通して、困難に立ち向かい、判断力と責任ある行動としての「勉励」と「自主」をやりきったのです。
そして文化祭、「堀川徒抗争~威信をかけた戦い~」、「堀川のKSK(キセキ)~この瞬間を君と共に~」、「Premium “HORI” day ~三時に帰っちゃいられない~」のテーマのもと、みなさんは爆発しました。そのチャレンジ精神が、堀川高校での探究活動と化学反応を起こし、さなぎたちの自己変革の触媒となっていったのです。そして今の自分が形成されてきたのです。文化祭は、校訓「立志・勉励・自主・友愛」の全てが込められていました。みなさんは、羽ばたいていくべき自己変革を見事にやりきってきたのです。一人ひとりの未来に向かって、それぞれの方法で、羽ばたいていってください。
さて、保護者のみなさま、お子様のご卒業おめでとうございます。改めてお祝いを申し上げます。この三年間、本校教育に対するご理解とご支援をちょうだいいたしましとことに厚くお礼申し上げます。振り返りますとさまざまなことが思い返されます。十分でなかったところや、うまくいかなかったこと、ご心配をおかけした点もございました。特に三年生での九月の文化祭、受験準備真っただ中での各クラスの目標達成に向けてのエネルギー発散には、得も言われぬ葛藤があったこととご推察いたします。自宅学習時間が文化祭準備にとられ、なかなか増えていかない状況、さらには自宅での学習だけではなく、クラスでのダンスの宿題まであり、ご自宅で踊っていたこともありました。それをそっと見守ってくださった保護者のみなさまがあっての、十八期生の今日があります。三年間のご家庭でのお子様の様子に、その折々に温かくお見守りいただき、心から感謝いたします。
本日、十八期生はここを巣立っていきます。彼らの記憶の中で、この三年間が、懐かしさとともに、少しの誇りを感じられるものであり続けることを願っております。今後ともどうかよろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。
十八期生、さなぎのみなさん。さなぎは、外的には静の状態に見えますが、内的には激動的な状態となっています。さなぎの内部は繊細なので、ちょっとした振動などのショックで、成長へ大きな影響を受けます。周囲の環境と対話しながら成長を遂げていきます。重層なエネルギーを保ちながらも、繊細であるさなぎの期間は、成虫に向けて、生命をかけた重要な時間です。ハードな学習活動とウルトラハードな探究活動で、もがきながらでもチャレンジし、立ち向かうことで、さなぎの総エネルギーと頑丈な器を作り出してきました。どうぞ、誇りを持ってください。
そして、見えないものを思い、聞こえない声を受けとめるその想像力を養ってください。みなさんの目には、木々の揺らぐ細い枝や呼吸をしている小さな葉っぱが映っていますか。みなさんの耳には、そよぐ風のゆらめきが聞こえていますか。みなさんの「心」には、光輝く太陽の、温かいぬくもりが、エネルギーとなって、感じられていますか。
それでは、十八期生さなぎのみなさん。くれぐれもからだに気をつけて。みなさんが巣立つ今日の夕刻、アトリウムに掲げた「さなぎ」の旗を、君たちの前途を祝して、たたむことにします。自立する十八歳として、少年少女から青年へ羽ばたいていく、さなぎたちの、次なる自己変革を願って。
平成三十一年三月一日 第七十一回卒業式
京都市立堀川高等学校長 谷内 秀一