すべては君の「知りたい」からはじまる
普通科・探究学科群(人間探究科・自然探究科)
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さまざまな問いに対する解決に向けた糸口の一つとして、「視点」、「位置づけ」の変換作業が重要だと思っています。それは、規定から外れた思考でも、ちょっとした変換でのいいと思います。そこから新たな気づきや発見につながり、おさまりどころを形成していくのだと思います。いわゆる、ものの見方と自分自身のポジショニングの変換です。もちろん、自分のスタイルの視点、見方と立ち位置を確固として保つことは大切です。その上で、別の視点、見方や立ち位置を意識してみることで、次なるステップをより広範囲に、そして深く進めていくことができると思っています。この変換の重要な点は、自分自身に新しい気づき、発見があるだけではなく、相手の心をも動かすということです。これは、とても大切なことで、自立する18歳をめざす堀高生に身につけてほしい力だとも思っています。
こんな経験をしました。ある年の夏、大型台風がやってくるというときに、営業していた多くのお店などが、台風対策に休業した時がありました。ほとんどのお店の入り口には、「臨時休業」または「大型台風の影響で休業いたします。」等の張り紙が貼ってありました。このこと自体は、なんの疑問もなく、特に変わったことではないです。ところが、あるラーメン屋さんの玄関の張り紙をみて、私は衝撃をうけました。その張り紙には、「大きな台風がやってきます。どうかお休みさせてください。お願いします。」と書かれてあったのです。特に気にしなければ「本日休業」と同意なので、「営業しない」という伝達事項は成立します。が、まさに同じ表現ではない。自分自身の位置づけ、ポジショニングが全く違う。主体をこちら側に置くのか、向こう側に置くのかの違いだけだけれども、こちら側に伝わってくるものの思いと重みをずしっと感じました。私はラーメン屋さんに好感を持ちましたし、繋がりたいと思いました。もっと知りたいという気持ちが起こってきました。この視点と姿勢こそが、相手を揺さぶり、理解を深め、繋がっていくエネルギーを発生させるのではないかと思います。さらには、解決策の見えない、地球規模での環境問題や欧米中心に広がっている国家間の社会的断絶の解決にむけた糸口となっていくのではないかとも感じました。ラーメン屋さんが、直接世界を救うわけではありませんが、糸口は私たちの身の周りにはたくさん存在しているのです。それに気づかないからこそ、気づくことをしなければならない。主体的に想像力を働かせ、より多層的な視点、異なる尺度や、より広範な解釈に基づいた視点が重要といえはしないでしょうか。
松岡正剛曰く、「模倣と連想と類推は、すべて想像力のトリガーなのである。」
学校長 谷内 秀一