「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
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堀音生の皆さん,おはようございます。
昨日,夕方に次の課題を郵送しました。5月17日までの課題ですので,計画的に学習するようにしてください。また,返信用の封筒を同封しましたので,これまでの課題で指定されたものを期日までに返送してください。また,京都市教育委員会は,5月17日までの期間を「家庭学習の充実の期間」とし,18日から31日までを「教育活動の再開に向けた準備期間」とするということを発表しました。6月の初めに授業が再開されることを念頭において,様々な点で準備をしておくことが始まります。本校でもすでに連絡したように,画像や音声を使った遠隔授業のレッスンを始めることにし,また普通科においてもそのようなことができないか,について検討をしています。いずれここで紹介したいと思います。
さて,今日は「西洋音楽の原点」についてです
エジプトやギリシアの音楽について前回お話をしましたが,それに続く西洋の中世社会では音楽はどのような存在であったのでしょう。西洋の中世では,現在につながる大学が12から13世紀に各地で誕生し,有名なところではイギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学,フランスのパリ大学などがあります。そこでは,学問を修める人間が履修するべき基本的な学科として,「自由七学科」というものがありました。文法,修辞学,弁証学,算術,幾何学,天文学,そして音楽の七つの学問です。今で言えば,国語,算数,理科,音楽となるのでしょうか。なぜ,音楽が含まれているかといえば,それは中世文化の根幹となる宗教,すなわちキリスト教には音楽はなくてはならないものだったからです。というのも,もともとキリスト教はその母体であったユダヤ教とともに,「偶像崇拝」を禁止していました。仏像などを作って礼拝をする仏教などとは違い,神は形では表すことのできない存在であり,神は自らの意思で言葉をもって語り,人はそれを自分の耳で聞くというものなのです。従って,音楽のように耳を通して人の心の奥底をゆり動かす芸術も,人間が作ったものでありながら,実は神の業とされます。従って,音楽の背景には神の摂理として,天体の運行や人間の精神の根本にかかわる理論があると考えられ,音楽は芸術であるとともに,学問でもあるとされました。
そして,そのキリスト教の中心としてローマ・カトリック教会が存在し,その最高の権威者でもある教皇(法王)や司教(僧侶)が,宗教行事(ミサなど)に音楽を不可欠なものとして使用しました。その始まりとされるのが,グレゴリオ聖歌(グレゴリアンチャント)です。名称は7世紀の教皇グレゴリウス1世に由来しますが,実はもう少しあと,8~9世紀にガリア(現フランス)かゲルマン(ドイツ)で成立したと言われます。グレゴリオ聖歌は単旋律の音楽で,和声も対旋律もなく楽器の伴奏も通常はない,ユニゾンで歌われる旋律が1本あるだけです。ネウマという独特の楽譜であらわされ,もともとは音の上下だけを表していましたが,13世紀ごろには,四本線つきの角形のネウマが多くの地域で使われるようになります。歌い方は地方によって異なりますが,現在ではフランスのソレム修道院の唱法(ソレム唱法)が国際的に通用しています。一本の旋律しかないシンプルな音楽ですが,その奥には,人々の神への思いや,心に訴える切々とした深い祈りが感じられます。皆さんも,一度聞いてみるといいですよ。
写真(ローマ サンピエトロ寺院),(ネウマ譜)