「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
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堀音生の皆さん,おはようございます。
新型コロナ感染症の新規患者数が全国的に減少傾向となり,国はどうやら一部の地域を除いて「緊急事態宣言」を解除する動きが出ているようですね。京都がどうなるか,学校がいつ再開できるのか気になるところですが,近いうちに皆さんにも学校の再開についてお知らせできるかと思います。
さて,今日はパリと中世音楽のお話です。
ほぼ1年前になりますが,2019年4月15日の夕刻,フランスの首都パリにあるノートルダム寺院で大規模な火災が発生し,その大聖堂の上部にあった尖塔とその周辺の屋根が崩落しました。ユネスコの世界遺産でもあり,歴史的建築物である大聖堂が炎上する姿に,フランスはもとより,世界中に衝撃が走りました。『ノートルダム』とは,『我らの貴婦人』という意味であり,カトリックにおける聖母マリアを指しています。この寺院は,1163年に着工され,1225年に完成した,西欧カトリック世界の象徴の一つでもありました。建設された当時,ヨーロッパでは,ノートルダム楽派と呼ばれる初期の多声音楽がおこり,その中心がこのノートルダム寺院でした。単旋律であるグレゴリオ聖歌をベース(と言ってもTenorというパートが歌っていましたが)に,その上に他のパートが,装飾的な旋律を重ねていく,といった初期の多声音楽でした。12世紀の終わりごろ,ノートルダム寺院で活躍していた作曲家のレオニヌスやその後輩でもあるペロティヌスが2声,3声そして4声の「オルガヌム(ポリフォニーの合唱曲)」を,この大聖堂に響かせていました。
フランス政府は,このノートルダム大聖堂の修復について,マクロン大統領が5年後のパリ五輪に間に合わせると述べています。世界中からの寄付の申し出があり,壮大なプロジェクトになることは間違いないですが,1000年近い年月を重ねて建造し,修復を続けてきた大建造物でもあるため,技術的な問題を含めて多くの課題が山積していると言われています。コロナ感染症の問題もあって,かなり厳しい状況かとは思いますが,一日も早い修復を願いたいものです。
(写真 ノートルダム寺院とその火災)