「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
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4月の着任から半年が経ちました。この間、保護者の皆さま、この校舎に関わる団体等の方々、地元城巽自治連合会関係の皆さま、同窓会・卒業生の皆さまに不行届きをご寛如いただきながら、応援を頂戴いたしましたことに、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
生徒へは、終業式に、プロの意識をもって高みをめざしながら、高校生の今しかできない表現を追究する演奏(それは一回性のかけがえのない一瞬)、をたくさん聴かせてもらったこと、それを支える堀音らしい学びの場面を日常に垣間見させてもらえたことに感謝を伝えました。
また、高校生はやはり可能性のかたまり。堀音生はとびきりの感受性と集中力を持っている、と肌で感じる半年でもありました。入学式の式辞で生徒みなにお願いした、「自分の呼吸のリズムを持ち、そして多様な他者と呼吸をあわせていける力を育んでほしい」ということを、仲間同士いろいろな形で実現している。そういうことを感じる場面も多くあったことも報告しました。それに続けて、私から生徒たちに以下のような1つのお願いをしました。
この秋休み、そして後期の時間、「わかったふうになる」ことをお願いしたい。これは「しったかぶりをする」という意味ではない。「わかろうとする」とイコールだし、もっと言えば「わからないという感覚を拒まない、できれば心地よくたゆたう」とも言い換えたい。
あなた方は、音楽というカテゴリーの中ではこれをうまく実践していると感心している。校外の音楽の高いレベルのプロから直接教えを得る機会がたくさんある。佐渡裕先生はもちろん、特設講座や公開レッスンの先生方のおっしゃることはとても奥深い。マインドのお話の中でも、人生経験の浅いあなた方高校生に対して、音楽を志す未来ある人として、完全に大人扱いしてとても深いことをお伝えになるし、逆説的な表現も容赦なくお使いになる。多分そのすべてを理解することは難しいはず。でもあなた方は、「わかったふうになる」力を持っている。今の自分の音楽に引き寄せて、自分なりに「わかった」と消化できるところは消化するうえで、消化しきれない部分も受け入れつつ、その後の宿題として心と頭と身体のどこかにキープしている、そしてどうも確実に栄養として取り込んでいる。そんなふうに見えている。
では、音楽と少し距離があると感じていることに対してはどうだろう。学校の普通教科でも(3年生は共通テストの勉強でも)、美術鑑賞でも読書でも、映画鑑賞でも、「わかったふうになる」時間、「わからないという感覚を拒まない、できれば心地よくたゆたう」機会を持ってほしいと。
そして、その機会を与えてくれる絶好の機会として、京都市教育委員会と京都大学の連携で、11月11日(土)午後 京都大学にて実施の「京都大学2023」の参加を呼びかけました。京都大学の8人の院生が講師となって分科会を持ち、それぞれ自分の研究テーマのおもしろさや、自分の高校時代についてなどを話したり、対話をしたりという機会です。今年度、2年生と3年生が授業を受けている、本校理科の非常勤講師 古田 悠馬先生も講師のおひとりです。
分科会には、音楽を志す堀音生が自分事としてとらえるべきテーマ-例えば科学技術とヒトは、社会は、どう関係性を持っていくのか など-がいくつもあります。若い研究者のお話は自分の常識や知識をぐんと超えて、難解なところもあるかもしれない。だからこそ「わかったふうになる」ことで世界が広がります。
もう一つこの京大研修の魅力は、京都市立高校の他の学校の生徒たちと触れ合えることです。ぜひ堀音生の人間的な魅力を知ってもらって、この人の演奏を聴きたい、ホリオンの演奏会に行ってみたいというファンを発掘してほしいと思う、ということも伝えました。自分の魅力で演奏会に足をはこんでもらう、クラシック音楽を発信する、このことは京大研修に限らず意識を持っていてほしいところです。
「わかったふうになる」ということを別の面からみると、「自分をひらく」ということかもしれません。かたくなにならない、自分を閉ざさないということともいえるかもしれません。そういう世界への向き合い方も、私は「エレガント」な姿であると考えます。自分を開いていると、むこうからいろんなものが自分に飛び込んできます。今日から始まった秋期休業中、そして後期と、そんな経験をたくさんしてほしいと願っています。そして、私自身もそうあろうと思います。
堀音に関わる全ての皆さまの、生徒たちへの、また本校への応援を、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
校長 中村 陸子