「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
〒604-0052 京都市中京区油小路通御池押油小路町238-1[MAPを見る]
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12月23日(月)の生徒自治会主催「ホワイトコンサート」で、年内での学校全体の取り組みは終了しました。しかし、明日26日まで、2年生、3年生の冬季補習は続き、また、レッスン室の貸出もあるので、生徒の登校は続いています。27日午前までレッスン室の使用を可とし、その後1月3日(金)までは学校閉鎖、土日を挟んで、6日から生徒の登校とレッスン室の使用が可となります。
令和6年は、能登の震災から始まり、世界を見回しても、胸の痛むできごとがたくさんありました。そんな中で、堀音は大きな事故もなく、数々の演奏会も含め、教育活動を進めることができました。それゆえに、生徒・教職員は、そのような周囲に目を背けたり、諦めたりすることなく、知ることを怠らないこと、そして、今自分が、音楽に向き合うことでできることに、真摯に取り組む日々でありたいと願ってきました。
そんな堀音を、保護者の皆さま、地元城巽地区の皆さま、同窓会の皆さま、父母の会の皆さま、京都市教育委員会の皆さまはじめ、多くの方々が応援してくださったことに、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
私自身は、今年も、生徒・教職員から、たくさんのことを学ぶ1年でありました。そのひとつ…
8月末から本校78期の一員であるドイツの留学生は、お母様が京都出身の日本の方であるため、コロナ前までは毎年日本で数週間を過ごし、地元の小学校に通う機会も持った生徒でした。ドイツでは課外活動や地域のオーケストラでヴァイオリンを弾いていたので、彼女の通うギムナジウムが推奨する短期留学の際に、日本で音楽を学べる学校はないかと、お母様がお調べになり、本校への留学を望んでくださいました。
1年生のクラスに入り、すべての授業を日本語で受講することはなかなかたいへんだったでしょう。音楽に関しても、ソルフェージュや音楽理論は初めての経験であったため、苦労も多かったと思います。彼女の頑張りを見ることも、そんな彼女に対しての、クラスメイト、先輩諸君、そして教職員の、自然で温かなサポートを知ることも、私にとっては大きな喜びでした。学校説明会や城巽音楽フェスティバルでのオーケストラ演奏で、堀音生としてステージに上がって演奏する彼女の、ひきしまった、きらきらした表情は今も目に浮かびます。
9月末、前期末考査を迎えることとなったとき、私は、彼女は成績や単位が必要な留学生ではないし、考査を受験しても評価するわけではないから、別室でヴァイオリンの練習でもするようにしては?考査で悪い点数とるのも、なんだか気の毒だし…。何なら、学校は休んで、ホストファミリーとどこかへ出かける機会にしては?くらいを思っていました。また、特別な扱いで考査をするとなると、教職員に負担がかかることも気になっていました。
そんな話を担任・副担任にしにいくと、ええーーっと驚かれ、「彼女は考査を受けたいと言っている。インターネットや書籍やノート、プリントを調べながらでも、受けた授業について、みなと同じ考査を受けたい」とのこと。「英語の教員は、指示文を英語にしたものを既に作っている。彼女が心おきなく調べたりしながら取り組めるよう、図書館の別室受験にしようと思っている。教員の体制も組める…」という言葉が返ってきました。
私は自分の浅慮を瞬時に猛省しました。日ごろ生徒・教職員に、「考査やテストは自分の学びのチェック。集中してベストを尽くす時間が大きな学び。何点かなどの結果より、振り返りを大事に!」などと言っておきながら、彼女の考査の件では、「考査=成績」のようは古い価値観にはまり、また彼女に対しても、善意のつもりが侮った扱いをしてしまっていたことに気づきました。教員たちが、彼女の意を汲んで、動き出してくれていることにも頭が下がりました。
彼女が「考査を受けたい」と言ったのは、ドイツでのこれまでの学校教育のなかで“テスト”の類の持つ本質的な意味が、しっかりと彼女に根付いているのだろう、と思いました。ドイツの「学び」観というようなものを自分の中に持っている彼女に感心しました。
もうひとつ。彼女が「みんなと同じ考査を受けたい」と言った理由に、本校の生徒たちが、教員とともに、授業や学ぶことを愉しんでいる、そんな雰囲気に溶け込んでくれているのではないか、と手前味噌ながらそう感じました。生徒たちがしばしば口にする「むずかしいけれど、楽しい!」という精神。これもとても嬉しくありがたいことに思っています。
過日、劇作家での平田オリザ氏のご講演を拝聴したときに、子どもたちに必要で、私たちがつけられているかどうか気にかけるべき「力」は、「学んだ力」でなく「学ぶ力」だ、とおっしゃいました。堀音の生徒たちが、これから先、人とのつながりの中で、ずっとずっと「学ぶ力」「学び続ける力」を発揮できるよう、2025年も教職員一同、真摯に生徒に向き合ってまいりたいと思います。
皆さまの引き続きのお見守りを、どうぞよろしくお願いいたします。
校長 中村 陸子