「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
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式辞
今年も本校東門にある寒紅梅はすでに満開となり、次は桜のつぼみの開花、 春の訪れを待つばかりとなりました。どこか一抹の名残惜しさと、何ともいえず心躍る期待感、毎年のことながら、年度の節目にあたり、複雑な思いと同時に、時の流れの早さをあらためて感じさせられる今日この頃です。
本日は、京都市教育委員会学校指導課 景山指導主事様、PTA音友会 井上会長ならびに役員の皆様、京都堀音同窓会 塩見会長様、堀音父母の会 竹迫会長様、城巽自治連合会会長 香川様 のご臨席を賜り、京都市立京都堀川音楽高等学校第7回卒業式を挙行できますこと、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
ただ今、第68期生40名に 卒業証書を授与いたしました。めでたくこの日を迎えた卒業生の皆さん、あらためて「卒業おめでとう」。本日受験のため、 やむを得ず式に出席できない卒業生もありますが、健闘を祈り、ともに卒業を 祝福したいと思います。 また、保護者の皆様、お子様のご卒業誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。今日の晴れの日をむかえられ、感慨も一入のことと存じます。ご入学以来、本校の教育活動にご理解をいただき、様々な角度からご支援を賜りましたことを、心より感謝いたします。ありがとうございました。
さて、3年前の2014年春の入学式、学校長式辞として、68期生を前に、このような言葉で激励し、入学を許可しました。『 校歌「海を遠く」の歌詞の中に『心を合わせ、そよげば歌がひろがる』『たたんだ翼をひろげ、恐れずに向かっていこう』とあります。「音楽」を通した学びの過程で、自らの個性を磨き、伸ばし、他者の思いに心を寄せ、自分に何ができるか思索してください。そして3年後には、与えられた環境の中から思い切って翼を広げ、大きく飛び立ってほしい。』と。 さらに式辞のしめくくりとして、皆にアンドレ・ジッドの言葉を贈りました。『改革、新しい人間はいったいどこからくるのか。それは外部からではけっしてない。それを自分自身のうちに見い出すことを知れ。各人は驚くべき可能性を内蔵している。君の力と若さを信ぜよ。たえず言い続けることを忘れるな。「自分しだいでどうにでもなるものだ」と。』
そして式の最後には、入学生代表として小島夏香さんが、「3年前の東日本大震災では多くの方々の命が奪われ、志半ばで勉強を断念せざるを得なかった学生も沢山おられます。将来この京都堀川音楽高校で学んだことを活かして音楽の様々な可能性を未来に発信し、私たち40名の奏でる音楽が人々に生きる希望と喜びを与えることができるよう、日々互いに切磋琢磨し、応援してくれる家族への感謝の気持ちを忘れずに精進してまいります。」と力強く誓ってくれました。
あの入学式の日から3年間…。もうすぐ70周年をむかえようとする、歴史と伝統を誇るこの名門音楽高校で、君たちは先輩たちの後に続き、音楽の専攻実技や専門知識はもとより、学力と教養、将来社会を生き抜くために必要な力を培ってきました。加えて、城巽地域の方々にあたたかく育まれながら、最新の恵まれた施設の中で、様々な行事や取り組みを通して仲間とともに、経験を積み重ね、新たな歴史を刻んできました。実技試験、定期演奏会、音高祭、ヨーロッパ研修旅行、そしてもちろん、日々のHR、授業、レッスン等、専攻の仲間や先輩後輩、先生方とのやりとり、それらを経験するその度ごとに、まちがいなく着実に成長をとげてきたはずです。同時に、自分たちがこの京都堀音の伝統をつくっていくのだという強い意思を感じました。その思いは今後、後輩たちに受け継がれていくと信じています。私自身この3年間、新たなことにも積極的に挑戦し、ともに充実した日々がおくれたこと、うれしく、感謝したいと思います。
現代社会は、国際情勢、政治、経済、教育、情報、さらにスポーツや芸術文化においてまで、とりまく状況は日々変化し、そのスピードに対応していくことの非常に困難な時代だと言わざるをえません。しかし、時代はどのように移りかわろうとも、芸術、文化が内蔵する大きな力は永久に不変です。だからこそ、君たちには音楽を追求し発信することの価値や可能性を常に模索し、この先も絶えることなく、それぞれの生き方で表現し続けてほしいのです。
生きるということは時間を流すことではありません。人類が積み重ねてきた文化に、どんなに小さくてもいい、自分の文化を積み重ねることです。そして、一生を真に充実して生きる道は、結局のところ、「今日」という日を真に充実して生きるほかありません。「限られた価値ある人生をともに尊重し合い、しっかり生きる」という原点に立ち返り、落ち着いて、物事の真理を求めて生きてゆく地道な姿勢を大切にしてください。
君たち68期生は、それぞれに個性豊かな音色を奏でながら成長を遂げ、いよいよ、さらなる大きな世界へと踏み出す時をむかえました。過去が咲いている今、未来の蕾で一杯な今。高校卒業はあくまでも人生の通過点です。今後も絶えることなく真摯に音楽そして自らの人生と向き合って生きていってください。そしてこの21世紀、混沌とした時代だからこそ、常に新たな自己改革を求め続けてほしいと切に願います。
2017年春…68期生の巣立ちにあたり、あえて、3年前の入学式で伝えたアンドレ・ジッドの言葉をもう一度、はなむけとして贈り、式辞とします。
『改革すべきは世界だけでなく人間である。その新しい人間はいったいどこから現れるのか。それは外部からではけっしてない。友よ。それを自分自身のうちに見い出すことを知れ。各人は驚くべき可能性を内蔵している。君の力と若さを信ぜよ。たえず言い続けることを忘れるな。「自分しだいでどうにでもなるものだ」と。』
平成29年3月1日
京都市立京都堀川音楽高等学校
校長 山脇 護