「人とつながる音楽家」を目指して
音楽科
〒604-0052 京都市中京区油小路通御池押油小路町238-1[MAPを見る]
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式 辞
毎年、京都・日本の春を象徴するような美しい装いとなるここ城巽の地。今年は桜の開花が遅く心配しましたが、ここにきて一気に満開となり、新たな年度のスタート、そして新たな出会いに時を合わせてくれたようです。晴れやかな、身の引き締まる思いで、今日の日を迎えることができました。去る3月21日に開催した第7回卒業演奏会は多くの方々から称賛の声をいただき、第68期生も皆無事に新たな世界へ巣立っていきました。今後大いに活躍し、鮮やかな花を咲かせてほしいと期待します。ただ、現代の社会を見渡せば、戦後70年を過ぎた我が国、震災からの復興がままならなかったり、心痛む出来事も後をたたず、また国の内外や分野を問わず、前に進めなかったり、時には心が通じ合わなかったり、解決すべき課題は世界中に山積し、様々な技術の進歩とは裏腹に、文化・スポーツ・芸術の世界においてさえ、人間の尊厳をも問われかねないような苦悩の現状も見えてきます。季節としての春は毎年確実に訪れ、桜は見事に咲きますが、心の春の訪れにはこれから成長し、伸びていく若者の力が不可欠な時代と言っても過言ではないでしょう。同時に、文化芸術、とりわけ「音楽」の中に普遍的に内蔵する、力や可能性を強く信じたいのです。だからこそ、その才能を与えられ、豊かな未来を託された、選ばれた若者には、しっかりと先を見据え、本質や本物をわきまえた高い「志」と、それに立ち向かう姿勢「覚悟」が求められていると思うのです。
本日は、京都市立京都堀川音楽高等学校、第8回入学式を挙行するにあたり、御来賓として、京都市教育委員会生徒指導課首席指導主事 山本様、PTA音友会会長 井上様、ならびに役員の皆様、京都・堀音同窓会会長 塩見様、城巽自治連合会会長 香川様、堀音父母の会 浦田様、のご列席を賜りましたことに厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。ただ今めでたく、平成29年度新入生、40名の入学を許可いたしました。
新入生、第71期生の皆さんは、見事選抜の難関を突破し、この晴れの日を迎えました。ここまで確固たる意志を貫き、たゆまぬ努力を重ねてきた、その成果が花開いたのだと思います。入学おめでとう。また、保護者の皆様、ここまで並々ならぬご苦労があったであろうと拝察いたします。お子様のご入学誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。京都堀川音楽高等学校 教職員一同、そして在校生一同、新入生の皆さんのご入学を 心より歓迎いたします。
さて、本校は、1948年(昭和23年)に 、「堀川高校音楽課程」として創設され、以後、出雲路学舎、岡崎学舎、沓掛学舎と移転し、1997年(平成9年)、日本で唯一の公立の音楽高等学校として独立しました。そして今からちょうど7年前の平成22年4月に、ここ城巽の地に移転してまいりました。新校舎とともに校名も、「京都市立京都堀川音楽高等学校」と改称、新たな一歩を踏み出し、昨年、制服をリニューアル。そして本日、第71期生を迎えることができました。創設以来、音楽を専門とする公立の高等学校として、全国から高い評価を受け、来年70周年をむかえる歴史の中で、国内のみならず、世界で活躍する音楽家を数多く輩出してきた、輝かしい伝統のある音楽の名門校です。したがって、新入生の皆さんには 本日から、この京都堀川音楽高等学校生の一員としての、誇りと自覚を持って生きてほしいと思います。
本校の教育目標は、「人権尊重の精神を基盤に、心豊かな人間を育てるとともに、将来幅広く音楽専門家として活躍し、文化の発展に貢献する人材を育成すること」です。この大きな目標を達成するためには、まず、水準の高い、恵まれた環境と、熱意ある優秀な教授陣に囲まれた中で、思う存分、「音楽力」を身につけなければなりません。今、皆さんは、「音楽」という、楽しいけれどもけっして平坦でない厳しい道を敢えて志したのです。自分が多くの中から選ばれた精鋭であるという、自信と誇りを持って、何事にも積極的に取り組んでください。また同時に、自ら進んで教養を身につけ、視野を広げようとする姿勢を忘れてはなりません。その基礎基本となる「確かな学力」を培うことも、けっして怠ってはなりません。なぜなら、皆さんの大きな夢の実現への道は、その「音楽力」とそれを裏付ける「幅広い教養」の両方がそろってこそ歩み出せるものだからです。高校時代は、そのためだけに与えられた、時間と空間を占有できる、貴重な日々の連続です。けっして時間を無駄にすることなく、思う存分「学べる」という歓びをかみしめ、他者を慮りながら自らを律し、たくましく、その貴重な日々を構築していき、将来に繋がる大きな「人間力」 を培ってほしいと思います。
本校の校歌「海を遠く」の歌詞の中には、『こころを合わせ そよげば 歌がひろがる』『ひとりでできないことも、わたしたちが集えばできる』『たたんだ翼をひろげ 恐れずにむかっていこう』 とあります。音楽を通した学びの過程で、自らの個性を磨き、伸ばし、他者の思いに心をよせ、自分に何ができるか思索してください。そして3年後には、与えられた環境の中から、思い切って翼をひろげ大きく飛び立ってほしい。そのために、この学び舎で、仲間とともに切磋琢磨し、時に悩み苦しみ、しかし常に楽しみ、有意義な3年間を送るのだという、ゆるぎない「覚悟」を 今日から持ちつづけてほしのです。詩人であり彫刻家でもあった高村光太郎の「書」の中に『心はいつでもあたらしく毎日何かしらを発見する』とあります。音楽を深く愛し、自分の中にある無限の可能性と力を信じ、これから始まる音高生活の充実は「自分しだいで決まるのだ」とたえず自身に言いつづけてほしい。また、そのためにも常に高い目標と志をたて、日々、あらたな出会いや発見を求めて、これから始まるすべての事に積極的に臨んでもらいたいと心から願い、式辞とします。
平成29年4月10日
京都市立京都堀川音楽高等学校
校 長 山 脇 護